27
入場口を抜けてすぐ大きな噴水が目に入り、その周りにはイメージキャラクターを身にまとった着ぐるみがいて大勢の人で賑わっていた。
その脇を見もくれず通り抜け、テーマパークの中心部分にそびえ立つ大きな樹木がある広場へ着くと、一同マップを片手に周りを見渡した。
かなりの数のアトラクションがある為、いくつか絞らなくてはならないだろう。
「遥は何したい?」
そう問いた瞬間、まだ繋がったままの腕に気付いて瞬時に飛び離した。
「ぼ、僕ですか?僕は」
「私ここ行きたい!」
バッと勢いよく間を割って現れたのは美咲だった。俺の鼻スレスレの位置にマップを開いて可愛い顔に似合わず眉間にしわを寄せては…睨んでいる。
はは…相当嫌われてんな、俺…。
「美咲、チケットすぐ買えたんだね」
「先に行くとか酷い!」
「ごっごめん、時間かかると思って、」
「だからって彼女置いてく!?遥のバカ!」
ふんっとそっぽを向いている美咲に「俺が言い出したんだ」と言うと更に睨まれてしまった。確かに、俺が悪いです。
それから、美咲が行きたいと言うアトラクションへ向かう途中、良之助が俺の脇へ寄り、肘で突っついてきた。
「俺、あの子ちょ−苦手」
そう言うと、先を行く美咲に顎で指して苦い顔をした。
「なんかあったのか?」
またすぐ横を歩く光が問いかける。
「あったも何も、光からメール着てすぐ泣き出して道譲ってもらってさ。絶対嘘泣きじゃん?いくら急ぐからってあれはないっしょ〜」
光も同じくその大胆な行動に驚きを隠せなかったようだ。俺は女特有の目敏さに眉をしかめた。
「それにさ…」
「それに?」
まだあるのか?と、ごくっと生唾を飲み良之助の次の言葉を待つ。
「あの子絶対Bカップしかないって!俺Dはないと」
バシッ
「いって!じょ、冗談だってっ」
光に蹴られたふくらはぎをさする良之助。まんざら冗談ではない事も知っている。
「そう、それとさ。待ってる間虎の事ばっか聞いてくるんだよ。なんなの、あれ」
「俺の、事?」
「そう。どんな奴だとか彼女いないのだとか」
すると光は溜め息をつき、信じられない言葉を吐いた。
「あの美咲ちゃん、虎が遥ちゃんを好きだって事に感づいてるな」
え…まじで?
冷や汗が滲む。
「まぁ、初めて会った時虎が女と勘違いしてた事も知ってるし、そう思っても不思議はないんだけどな」
「ああ、そうか…」
「じゃあ、もしかして今日付いて来たのも監視の為、とか?」
「そうだな、あながち当たりだろう。虎に近づけないようにしてるしなぁ」
じゃあ、睨まれていたのはただ嫌われているからとかではなくて、敵対視されてた訳ね…。
納得したと、俺は小さく笑った。凄く合点がいく。
「でもせっかくここまで来たのにさ〜、邪魔されて終わりとか嫌だな。それに俺は虎のが大事だから、虎の恋応援するよ」
「良之助…」
「虎、みんな一緒の思いだから。俺達にも任せてくれや」
光…。
「え?なになに、何の話?」
そこへ現れたのは、いつの間にか買ってきたホットドックを頬張り歩く泰司。
「はぁ〜」
三人から大きな溜め息が漏れ、意味分からず白い目で見られる。
「た…たべる?」
「さぁ行こう行こう」
「まずはあのアトラクションやらね?」
「いいね〜!」
「え?ちょ、置いてくなよ!」
垂れるケチャップを風になびかせ、後を追う泰司であった。
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