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背面ディスプレイに『遥』と書かれた文字がスライドする。「谷垣」と編集で省いたのは触れないでほしい。俺のささやかな乙女心だ。
携帯を持つ手が汗ばむ。身動きをしない俺に遥からのメールだと悟った光達は、もの凄い勢いで群がってきた。彼らの目からは、「なんて!?」と聞いているのが伝わる。

待ちに待った瞬間の時…
弱冠震える指先でメールを開く。一通り読み光達を見渡してニヤリと笑った。

「きょう、遊ぼうだって…」



「よっしゃー!」
「え?なになに?」

ジュースと財布を抱えた良之助が丁度教室内に戻ってきて、興奮する俺達に駆け寄った。光にメールの知らせを聞いた良之助は光達と共に一緒にガッツポ−ズをし、まるで自分たちの事のように喜びだした。俺はというと嬉しくて嬉しくて何度も何度も画面を見る。

『こんにちは、タイガさん。昨日はありがとうございました。お友達になれて凄く嬉しいです。早速なんですが、きょう暇でしたら遊びませんか?』

遥らしいなんとも礼儀正しい文章なのだろう。どんな気持ちでこのメールを送ってくれたのだろうか。たった一つのメールに俺は色々な思考を巡らす。こんなに待ちわびて、こんなメールだけで幸せになれる俺って、凄く単純だ。それぐらいに本当に遥を想ってるんだと胸が熱くなってしまった。

「虎!今日こそヤッちまえよ!」
「アホぬかせッッ!」

またそれか!と、ガツンっと良之助の頭に一発お見舞いする。

「今言ったの俺じゃないしっ泰司だよ!」

頭をさすさす擦る良之助。なんだかとばっちりばっかだなあと、ちょっと半泣き。
ああ、楽しみでしょうがない。何して遊ぼう何の話をしよう。まるで小学生のように無邪気な思いが駆け巡り、まさに遠足前の小学生な気分である。
とりあえず、ジュースだけに飽きたらずパンやお菓子を人の財布で購入してきた良之助を再度一喝し、きっちりと代金はお返し頂いた。
遊びに行くのに、手持ちが千円も満たないなど恥ずかしすぎる。

ああ、早く放課後が来ないかな。
森先に怒られようが今日の俺は晴れた気分だ。


(15/49p)
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