10「合格」
天文大付属高校。略して天高。国内でも有数の名門校である。
そこのがっちりとした風格を漂わせる正門の前に現れた、不似合いな身なりをした男四人。勿論良之助の思い付きで引きずられて来た虎、泰司、光、発案者の良之助の4人で、ある。
丁度下校時間だったのか、校内から次々と天高の生徒が出てくる。いかにも頭の良さそうな身なりのきちんとした雰囲気。
門の角に突っ立て居る四人を見て一部の生徒達はコソコソと話したり目を合わせないようにしているが、何せ背の高く整った顔立ちをした四人だ。過ぎ去る女子生徒が黄色い声を上げて通り過ぎていく。
俺はと言うとそんな女子生徒に見向きもせずに、乗り気ではないと嫌な顔をしつつも遥に会えるかもしれないと言う思いに、若干体がそわそわとしてしまっている。
良之助と泰司は通りすがる女生徒をまじまじと見ては、イケルとかムリだなとか言っている。目ぎらつかせちゃって、女の子怖がってるって。
「タイガー、どの子よー?」
「えー…あぁー…」
背後から肩に顔を置きながら聞いてきた光を後目に、俺はチラチラと視線を校門内に向け遥の姿を探した。今まで女が居ればすぐさまお持ち帰り出来るかどうか品定めをしてしまうのだが、今では全ての女が芋に見える。何という恋マジックだ。
その時、光が1人の女生徒に遥を訪ねた。こんな時すぐに行動するのが光である。
「谷垣君なら、もうすぐ出てくると思うよ?」
ありがとう、と言って光を俺を見て一言言った。
「谷垣クン、だって。本当に男なんだなぁ」
「あ?なんだよ、信じてなかったのかよ…」
光はハハっと笑って、俺の肩を組んでくる。泰司と良之助のアホは相変わらず女を品定めしている。その時だ。
「あ。…あの子、」
俺は、少し先にこちらに向かって歩いてくる、1人の男子生徒に指を指した。三人は一斉に目を指の先一点に集中させる。
徐々に徐々に、遥は虎達がいる正門へと向かってくる。すると、良之助が両手を振りかざし「遥ちゃ〜ん!」と、大声で呼び出した。
「わわ!ちょっ、良之助!」
虎は慌てて、良之助を押さえつける。気付かれるだろーが!まだ、心の準備が…
しかし、遅かったようで、こちらに気付いた遥は、初めはびっくりした面持ちだったが、虎の姿を見てホッと肩を撫で下ろした。
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