◇◆◇

「お待たせしました。」

会計を済ませ、店内のロビーで待っていると、遥は急いでくれたのか息をあげほんのりと頬をピンクに染めている。
どんな些細な事までも、ドキドキしてしまう、俺。かなーり、重症だ。うん。

店を出て夕食もまだであろう遥に気を配らせ、近くのファミレスへと入った。
ドリンクを頼み遥は手際よくメニュー表をまとめて立てかける。
まず、先に口を開いたのは遥からだった。

「昼間は、すみませんでした。怪我していませんか?」
「んー大丈夫。かすり傷一つ付いてないから。俺頑丈だからさ、トラックに引かれない限り大丈夫なんじゃねーの」

あははっと、笑いの相槌を取りお互いに少し緊張がほぐれたか、続けて会話をする。
まず判った事は、実は家が近いこと。最寄り駅も同じで、昼間ぶつかった地元の横に流れる大河を渡れば自宅があるらしい。時間で換算すると5分もかからない距離だ。学区が違ったので今まで気付かなかったのだろう。
そして、16歳で2つ下だと言う事。
学校は市内有名な高校に通っているらしい。
もっと、もっと知りたい。
俺は、遥との会話に胸を弾ませる。
こんなに些細な情報のやり取りすらも楽しく思えるなんて、今まで感じたこともない。
さほど時間も経っていないないのに、凄く長い事一緒に居る気さえする。

その時、1人の女性が、俺たちが居る席へ足早に向かってきた。

「はるか?」

ポンッと彼女の肩に手を置き、顔を覗く仕草をする。

「美咲」

知り合いかな?俺は、ドリンクを飲み、2人のやりとりを見ていた。仲良しげだし、親友といった所か?彼女の友人は更に小柄で、長い髪を綺麗に巻き落ち着いた雰囲気を醸し出している。俺の周りには居ないタイプだな。そう言えば俺の周りの女って、ケバい態度でかいギャル女ばかりだな、と鼻を鳴らす。
俺もいかにもチャラ男だし、仕様がない事だが。
呑気に考えてたら、遥の友人が「誰?」と聞く声が聞こえた。
その問いに、俺達はある事に気付いた。あれ程お互いに話をしていたのに、名前を言っていなかったのだ。可笑しいな、と顔を見合わせて笑った。

「俺、虎。」
「たいが?」
「変わった名前ね、でも格好いい」

2人は顔を見合わせて、口々に格好いいと言っている。勿論当たり前だ、と思った事は口にしない。
すると、遥はまず友人の紹介をしてくれるようだ。友人の手を取り微笑んだ。

「この子は





彼女の美咲」





へ?





「僕は、谷垣 遥(タニガキ ハルカ)って言います。」





僕?




頭がショートした。


(5/49p)
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