駅周辺に立ち並ぶネオン街を歩いて行く。あのまま帰るのも何だったので街をぶらつこうと思ったのだが、これといってやりたい事もなく繁華街をうろつく。

「はー、つまんねぇ…」

そんな誰に問いかけるでもない言葉を吐いて、歩みを止めずに火をつけた煙草で一息付いた。
体がだるい、楽しくない、つまんねー人生だよな、まったく。
そんな自分にフッと鼻笑いをし、また煙草を口に含む。
あのサラリーマンは、今から家族の元へ帰るのか。あそこで屯している高校生は家出だろうな。あの小学生は塾か、今のガキは受験やらで大変だなー。そこでバイトしてる奴は金稼ぐのに必死なんだな。
俺はすれ違う街行く人の波に飲まれながら考えていた。
人それぞれに様々な人生を抱えていて、その中の俺は絶望も何もない無難な人生をただ歩んでいる。ここに居る人々と何ら代わりのないただの人間だ。

「カラオケ、ムーミです。よろしくお願いしまーす!」

そんな空虚な考えを巡らしていると、割引チケットらしきものを差し出されたが、俺は無視をした。
もらっても行かねえよ。ゴミになるだけだ。
そう思い、短くなった煙草を大きく吸った。だがその時、妙な違和感に駆られた。

「あれー…?」

立ち止まり、後ろを振り返る。
この空気、この感情。まだ新しい身に覚えのあるふわりとしか世界。心臓が早く脈打つのが、判る。
おい、まさかー……

「カラオケミームでーす!フリータイム飲み放題付き千円ー」

背中にミームと書かれた黄色いポロシャツに黒のパンツ姿でチケットを売る彼女は、まさしく。

「また会えた…」
「あ、あの…?」

気付けば駆け寄り握り締めてしまった腕に、あの時の彼女の大きな瞳が揺れた。


(3/49p)
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