2「再会」

自己紹介が遅れた。俺の名前は桐林 虎(キリバヤシ タイガ)。
変わった名前だろ?でも、俺は結構気に入っている。だってカッコ良くないか?
まず名前で女は50%落ちる。
「変わった名前ね!」「格好いい」「虎って漢字がまたいいよね」と、出会った女たちは口々に言ってきただけはあると思う。そして、残りの50%は勿論俺自身の魅力だけど、結論としてこの名前に見合った人物なのだと自画自賛している。

「ちょっとタイガ。ちゃんと観てるの?」

横に居る女がキッと睨んできた。待ち合わせ場所に着いた頃には既に三時間近くは遅刻をしていて、女は絶賛不機嫌中だ。

「観てるよ。あはは!おもしれ」
「今感動シーンなんだけどっ」

女はフンッと鼻を鳴らし、背もたれにトスンっと体重をかけた。いかにもキツそうな性格が伺える。
忘れていた。今は映画館に来ているのだった。彼女は数居る女の中の1人。本命彼女ではない、と言うかそんなに愛せる女なんて居やしない。言い寄る女共の相手してやってるだけで、実質俺も楽しんでるしいいと思うんだ。気楽でいい。
それよりも…。

はあー忘れらんね…。

先程会った美女を、思い出し溜め息をついた。
今横に居る自称彼女もモデルをやっているだけあって可愛いさは確かにあるが、あの美女とは違う。何が違うかと言うと、あの美女からは気持ちのいい優しいオーラが溢れ出していて、吸い込まれそうだったのだ。思い出しただけで、熱い息が出る。

「タイガ!!」
「おっ、おお?」

気付けば女はもの凄い剣幕で、目の前で仁王立ちしていた。
あれ、映画終わってる。結局、全然観てねーや。ま、いっか。
そんな事をしれっと思った俺を一層睨みつけると、女はぷんすかと先を歩いていく。 既に夕方を過ぎ、暗闇が外に訪れていた。近くのレストランで食事を済ませ、俺たちは次の行き先を考えている。

「ね〜タイガ。いつもの所行く?」
「んー、そうだなぁ‥‥」

いつもの所とは、単刀直入に言うとラブホだ。年頃の男だ、それぐらい行くさ。
いつもなら、多少嫌がる女を上手いこと言いくるめて、連れて行くのだが(もちろん合意の上で)、今日はそんな気分ではなかった。

「今日はやめようや、俺帰るわ」
「は?ちょっと、どうしたのよ急に。タイガらしくないじゃない。え、ちょっ、タイガ!?」

女が引き止める声を無視して、俺は駅へ向い歩きだした。振り返ろうとしない俺に女は諦めたのか、もう引き止めようとはしない。こういう場合に、このさっぱりした関係は非常に楽だなと改めて思った。


(2/49p)
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