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ふるふると肩を揺らす豹吾のただならぬ雰囲気に、遥は息を呑む。

「えーあ…、豹吾くん…?」

すると、何やら涙を見せながらぶつぶつと唱えだした。

「ウソだ…ウソだぁ…」
「?」
「遥ちゃんなんで胸ないのお──!!!!!?」

ーは!?

そのまま入ってきた豹吾に肩を鷲掴みされ、前後ろにと体を揺さぶられる。ぐらぐらと視界が揺らぎ、遥は目を回す。

「だって!ない!ぺっちゃんこ!!」

ぺたぺたと胸を叩かれて、遥は「あ!」と思い出した。
…まさか豹吾くん、本当に僕を女の子だと思い込んでたんだ…。

「ちょ、ちょっと止めて、豹吾くん。僕胸無くて当たり前!男だから!」
「男!?そんな訳ないじゃん!!だってほらこんなに可愛いし、ちんこなんて付いてない」
「ぎゃっ!!」

そう言って突然、自身を握られて、遥は腰をすくめてしまった。
豹吾は、まさかの感触に眉を潜め、そこの位置にある逸物を凝視する。僅かに膨らんでいる下着。それは、自分の下半身にも見覚えのある膨らみ。
豹吾は恐る恐る下着の上のゴムを手前に引っ張り中を覗いた。

「ひひひひ豹吾っっ!!!!」

あたふたと煮えきりそうな程赤面状態の遥の前で、豹吾は愕然と肩を落としうなだれる。
知りたくなかった現実と言うか、あぁ…。

「ちっちゃいちんこがある…」
「ちっちゃい言うなあ!」

ついつい突っ込んでしまった遥は、豹吾から身を離した。すると、また体を硬直させる。

「嘘だ…俺の天使が、オアシスが女神が、ちんこのついた男だったなんて…」

ぶつぶつと驚愕の事実にぶつくさ文句を垂れる豹吾は、遥の異変に視線の先である背後に振り向いた。
すると、そこには鬼が般若のお面を被ったような虎が立ちすくんでいる。
どす黒い怒りのオーラを漂わせる虎に、豹吾は全身から血が蒸発したような気分に陥る。
恐怖、まさにそれだ。

自分でもまだ触れた事のない遥の下半身を握りしめた所に遭遇した虎は、更に覗いてまで現物を見た豹吾に殺意すら芽生えたのだった。
この後、兄から無言で関節閉めを食らった事は言うまでもない。


(22/30p)
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