21

風呂場の扉が閉まった音を確認すると、一階に降りてすぐ様リビングに入った虎は、オーブンの前で時間を設定する豹吾のお尻を蹴り上げた。

「いて!」
「お前なぁ、遥来てる時に部屋勝手に入ってくるんじゃねーよ。」
「えー、俺遥ちゃん居るなんて知らなかったし!」
「玄関に靴あっただろうが」
「見てないって、そんなの。知らないっての〜。理不尽だー」

蹴られたお尻を擦りながら、豹吾は台所の後片付けに取りかかる。小麦粉やエッセンスなどがキッチンに置いてあるので、オーブンの中で焼かれているものからすれば、ケーキであろう。
ほんっと、こいつはつくづく見た目に反する主夫みたいな奴だな〜と、お茶を片手にソファーに腰を下ろした。
点けっぱなしのテレビを見れば、政治がどーのこうのと朝のニュース番組の延長で、コメンテーターが云々と語っている。
時刻は、10時半。
約束の時間は1時だったので十分間に合うだろう。
こんなに早く起こして来たのは、きっと今作ってるケーキを食べさせるつもりだからだろうな。俺甘いもの好きじゃねえの知ってる癖に。
ボケーッと無意識にテレビを見ていたら、背後のテーブルにお皿を置く音がする。
振り向けば、そこには目玉焼きとパン、ポタージュスープが湯気をたたせていた。
二皿ずつあるので遥の分まで用意してくれたようだ。気遣いだけは一丁前に大人だな、と豹吾に嫌みを言えば、礼ぐらい言え、と返された。ありがとうさん。

また、テレビに顔を向けた虎はリモコンでチャンネルをコロコロと変える。日曜日はこれと言って見たい番組はない。とりあえず、旅番組にでもしとくか。










ジャ──

キュッ

シャワーを止めた遥は、さっぱらとした体をタオルで水気を切り、風呂場から脱衣場に入ると更にバスタオルで濡れた頭をガシガシと拭いた。
虎さんに渡された紫色のローライズのボクサーパンツを取り、開いて腰に合わせた。

大きい?かな。大丈夫かな。

いくら真新しいからと言って、虎の下着だ。変な意味ではないが、気恥ずかしい気分になる。

履いて見ると、ボクサーパンツなだけにブカブカではないが、腰回りが緩い感じだ。まぁ、大丈夫だろう。

洗面台の鏡に自身の姿が目に入り、ひょろりとした上半身が気になった。
抱きついてくる虎の程よい筋肉とゴツゴツとした骨ばった色のいい肌ではなく、白くてストーンとした自分の体。
同じ男としてこうに違う事に、遥はため息をついた。

よし、今日から筋トレをしよう。虎さんみたいになるんだ!

ふんふんっと鼻息荒く決意をしていると、突如扉が開いた。
ビクッと体を揺らしその人物を見てみれば、豹吾が台拭きやタオルを片手に立っている。

「あ、ごめん。タオル、洗濯機にね」

はは、っと笑う豹吾は、遥の後ろにある洗濯機にタオルを投げ込むと、「ご飯出来てるから、リビングに来てね」と言い扉を閉めた。

なんだか見られてはいけない所を見られた気がして、遥はそそくさとジーパンに脚を入れる。

すると、また勢い良く扉がバンッと開いた。
遥は何事かと目を見開き、入り口を見たらば、また豹吾が立っていた。

何故か、青くなって。


(21/30p)
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