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「あかねさんってバイト先でも凄いモテてね、そんな子に好かれるくらい、たいがさん格好いいし。ぼく、女の子みたいに胸なんかないし、ぺったんこだし。男だから…その、付いて…るし。なのに何の取り得もない、しかも男のぼくの事好きだって言ってくれてる。凄い嬉しいんだよ?幸せなんだけど、たいがさん僕より経験豊富だし、やっぱりふわふわした女の子のが本当はいいんじゃないかって、だから」
「待、待て落ち着け、遥!」
酔っているからか?酷く支離滅裂になってるし、言ってる本人も「あれ?」と訳が判らなくなっているようだ。
「遥もしかして、ヤキモチ焼いて飲んだのか?」
「あ……。えっと、そうなの…かな…」
途端、何だか肩の力が一瞬にして抜ける。
なんだ、そっか…。そうなのか…。
思わず口元が緩む感情を抑えつつも、俺は湧き上がる思いは止められなかった。
好きな人に、ヤキモチを焼いて貰える事が、こんなに嬉しいものなんだ、と。
以前の俺なら、ヤキモチを焼かれたり、束縛をされる事を酷く嫌っていたのに。
少し、悪戯心が疼く。
「そうだなぁ、確かに茜って奴は可愛かったけど」
「え!」
今にも泣き出しそうな表情で振り返る遥。
あぁ、ダメだ。可愛すぎる…
「嘘、冗談。まったく興味ないから。第一俺だってショックだったんだぞ?他の奴に紹介するみたいな事言われてさ。俺は遥だけいればいいのに。」
遥の身を寄せ、肩を並べるように抱き締めた。
「あー、でも嬉しい。遥がそんなに想ってくれてたんだって実感出来て」
指通りの良い髪を指で解かしながら、ニヤニヤと笑ってしまう。遥がヤキモチを焼いてくれたんだ、行って良かった等と不謹慎ながらに考えてしまった。
「…たいがさん」
ふと、遥を見ると、抱きしめていた腕から身を離し何故か立ち上がった。そしてそのまま、座る虎の脚の上に跨りだしたのだ。ぎゅっと、身が溶けて引っ付きそうな程に抱きしめられる。
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