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◇◆◇
店内とは違い、外は空気が若干ひやりとして肌が冷める。
「遥、歩けるか?」
「だいしょーふです」
最後のお酒が効いたのか、若干呂律がおかしくなっているが、歩みはまだ大丈夫そうだ。
右手で自転車を押しながら、左手で遥の温い手を握り、ゆっくりとしたスピードで駅前を離れていく。
大通りを抜け、住宅街へと入ると、遥が途中で歩みを止めた。
俯いて、喉を気持ち悪そうにしている。
「吐きそう?」
遥は軽く頷く。丁度、向かい側に公園があるから、そこまで歩けるか?と、聞くと、限界を感じるのか横に首を振った。
路上ではマズい、何とか公園内のトイレまで行けないものか。
少し考えて、遥の前にしゃがみ込み、背中に乗るように合図を送る。余程限界が近いのか、言われるがままに背中に跨った。
ジャ───
無機質な水音が、ベンチ横のトイレから聞こえる。
ゆっくりとした足取りで出て来た遥をベンチに座らし、合間に自販機で買ってきた温かいお茶を、手渡した。
「…めんなはい、たいがさん…」
「謝る必要ねぇよ。少し楽になったか?」
失態を見られて恥ずかしいのか、遥は涙目になりながら小さく頷く。
「酒弱いのに、何で飲んじゃったの。」
遥は、優しく体を支えてくれる虎の手の温もりを感じながら、少し間を空けて、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「だって…たのしそうでした」
楽しそう?
どう言う事だ、と黙って遥の言葉を待つ。
「ほ、ほら。あかねさん…結構かわいいし、なんか2人で楽しそうに、いっぱい話してた」
「ちょっと待て、俺が楽しそうにアイツといつ話してた?」
疑問が浮かぶ。どう考えても、俺は楽しくなどなかったぞ!?
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