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ども、とビールをテーブルに置き軽く拝借すると、横に座るキャバ女から、ヒシヒシと痛い程の視線が伝わってくる。

目を向けるな、虎。噛みつかれるぞ。

なんて自分に言い聞かせてみたりして、半身が嫌に汗ばむ。
すると、向かいにいたガタイ男がニヒッと大きな口で笑顔を見せた。

「いつも谷垣待ってる人だよなぁ?」
「え、はい」

一応年齢もまだ判らないので敬語で返すと、ガタイ男、基、鈴木と言うガタイ男が、茜と虎と自身の年齢が同じだと明かした。
更に隣のギャル男は和也、黒髪女は恭子と名乗る。
和也は高校三年で、恭子は遥と同じ高校二年らしい。
どこの高校に通っているか、今は何しているのかだの、何気ない質問が飛び交う。
そんな会話の中、横に座る遥が肉や野菜を網に乗せながら、なんだかニコニコとしていた。

「そんな腹減ってたのか?」
「え?」
「ずっと、笑ってるぞ。」

そう言って、遥のつり上がった口元を指でつつくと、顔をカァーっと赤くし、軽く首を横に振った。
照れ隠しか、焼けた肉をどんどん俺の皿に盛って行く。

「ち、違いますっ、良かったなぁ〜って…」

良かった?

そう言われて頭を捻ると、昨日の自分の態度を思い出す。そりゃ、不安になるな、と思った。

そっと、机の下で遥の手を握り締める。
ギュッと握りあいながら手のひらが触れ合って、指を絡めて見付からないように遥の指を遊んだりする。話なんかそっちのけで、俺は遥との秘密の空間を楽しんだ。
すると、キャバ女の茜が、ビールを握る虎の手をつついた。

「ねぇ、タイガって彼女いるの?」

俺は眉をしかめた。
せっかく遥と楽しんでるのに、邪魔しやがって。
いるよ!正に横に可愛い恋人がな!

…だが、そんな事も言えず。
遥の知り合いだし余り粗末には扱えないので、営業スマイルで返事をした。

「さぁ?」
「えー!何それ〜。いるんだやっぱー。残念〜」

茜はブゥッと頬を膨らまし、カクテルをクイッと飲む。可愛らしいその仕草は、前の俺ならツボだっただろう。
だが、今はまったく眼中にない。
言うならば、遥と2人っきりにしてくれだ。
しかし、茜はボディタッチを含めながら、ひたすら話かけてくる。

「ね、ね。茜セカンドにどう?」

はぁ?


(10/30p)
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