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「えーっと。今日は、茜の送迎会です。まぁみんな好きなだけ飲め。終わり」
え、それだけかよ。
「えー!もっとなんかないの〜!?私の送迎会なのにぃ!」
隣にいた臭いキャバ女が言った。
お前が茜かよ。
…って事は、俺を連れてこいと言った奴ね…。
「いいじゃん!飲めるんだからさ〜」
ガタイ男の横のギャル男が、既に半分ないグラスを片手にゲラゲラと笑った。
黒髪の大人しそうな女も、クスクスとカクテルを片手に笑っている。
キャバ女にガタイ男、ギャル男に黒髪女。そして、遥。
どんなアンバランスだ。
と、思いながらも、しっかりとビールを一気に飲み干した。
仕事後は、格別美味い。
「あ、たいがさん、生頼みますか?」
遥は店員を呼ぶと、新たに飲み物をオーダーする。
少しして、肉や野菜と、追加した飲み物がテーブルに並んだ。
黒髪女がせっせと準備するのを見ていたら、遥がチョンチョンと指を突っついてきた。
「紹介、していいですか?」
紹介…。
「僕の恋人です」ってか?
まぁ、そんな訳ないが、なんだか軽く嬉しくなる。
目でサインを送ると、遥は騒ぐみんなの間に声を挟んだ。
「あの、こちら虎さん、です。」
友達です、とも言わない辺り遥の配慮だろう。
みんなの視線が、俺に一気に注がれる。
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