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「行くよ。ただし、遥ずっと隣にいろよ?」
「…いいんですか?」
「遥の立場もあるしな。それに、多少お前の職場関係とか興味あったし?」
「…たいがさん」
すると遥は「ありがとうございます」と抱き返してきた。
すりすりと頬をスリ寄せて来て、遥はホッとした表情を見せる。
確かによく考えれば、遥の周りの環境を知らない。唯一、知っている人物と言えば、美咲だけ。
学校も門までは行った事あるが、友達も知らないし…。
そう考えれば、良い機会なのかもしれないな。
女には…悪いが、相槌打ってりゃいいだろ。俺が大事に思う人は、遥だけなんだし。
そう思うと、なんだか楽しみになってきた。
遥をギュウギュウ抱きしめ、愛情を補充してから、手をつなぎ歩いていく。
そして夜は更けて──
翌日、時刻は23時。
守道がまだ残る店のシャッターを下ろし、自転車を押して横断歩道を渡った。
遥のバイト先の前を見ると、既に店先には5人の男女がいる。
その中にいた遥が俺に気付き、笑顔を見せた。胸元で軽く手を振り、駆け寄ってくる。
残った4人の視線が注がれる。
「悪い、待たせた?」
「いえ!僕達も今終わった所なんで。お店、この先の焼き肉屋さんで予約しているらしいです。」
焼き肉かよ。夜中の23時に…
いまいち脂っこいものを欲していない胃袋だったが、俺は招かれた客だ。文句言うまい。
俺を合わせた計6人は、ぞろぞろと歩きながら、数十メートル先にある焼き肉屋へと入った。
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