翌日も。
そのまた翌日もと、遥のバイトがある限り、俺達は夜中一緒に帰った。
いつも同じ街頭の周囲で、冷たい遥の手を握り、人目を忍んでキスをする。
ただ、それ以上は進まない。
お互い明日があるし…と、言い聞かせるようにして。

そして今日も、俺達は肩を並べて歩いていた。

「あ、」

何かを思い出したかのように声を上げたのは、遥だ。

「あのね、明日…土曜日、バイト先で送迎会があるんですよ。それで、」

そこまで言うと、チラッと俺の目を見て何やら困った顔をしている。

「その、虎さんも一緒に参加して欲しいんです。」
「俺が?」

遥はコクコクと首を縦に振り、続きを話す。

「バイトの女の子が辞めるんですけどね、その子がいつも迎えに来てくれてる虎さん気に入っちゃって、連れて来いって…」

虎の眉が、ピクッと上がる。

「…遥は良い訳?」

正直、余り嬉しい誘いじゃない。俺は遥と恋人なのに、そんな知りも興味もない女の為に、会いたくもないのが本音だ。
俺の不機嫌を察知して、遥は慌てて話を続ける。

「ごめんなさい!どうしても断る事が出来ない子で、押し抜けられちゃって…ごめんなさい…」

語尾が小さくなる遥に、俺は焦りを覚えて冷や汗をかいた。

「そんな謝らなくていいから!無神経な態度取って悪い。別に怒ってる訳じゃないし、な?」
「無神経なのは僕です、ごめんなさい…」

あぁ、こんな事でケンカなんかしたいんじゃない!
遥を抱き寄せて、すっぽりと体を包み込む。


(6/30p)
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