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翌日も。
そのまた翌日もと、遥のバイトがある限り、俺達は夜中一緒に帰った。
いつも同じ街頭の周囲で、冷たい遥の手を握り、人目を忍んでキスをする。
ただ、それ以上は進まない。
お互い明日があるし…と、言い聞かせるようにして。
そして今日も、俺達は肩を並べて歩いていた。
「あ、」
何かを思い出したかのように声を上げたのは、遥だ。
「あのね、明日…土曜日、バイト先で送迎会があるんですよ。それで、」
そこまで言うと、チラッと俺の目を見て何やら困った顔をしている。
「その、虎さんも一緒に参加して欲しいんです。」
「俺が?」
遥はコクコクと首を縦に振り、続きを話す。
「バイトの女の子が辞めるんですけどね、その子がいつも迎えに来てくれてる虎さん気に入っちゃって、連れて来いって…」
虎の眉が、ピクッと上がる。
「…遥は良い訳?」
正直、余り嬉しい誘いじゃない。俺は遥と恋人なのに、そんな知りも興味もない女の為に、会いたくもないのが本音だ。
俺の不機嫌を察知して、遥は慌てて話を続ける。
「ごめんなさい!どうしても断る事が出来ない子で、押し抜けられちゃって…ごめんなさい…」
語尾が小さくなる遥に、俺は焦りを覚えて冷や汗をかいた。
「そんな謝らなくていいから!無神経な態度取って悪い。別に怒ってる訳じゃないし、な?」
「無神経なのは僕です、ごめんなさい…」
あぁ、こんな事でケンカなんかしたいんじゃない!
遥を抱き寄せて、すっぽりと体を包み込む。
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