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◇◆◇
あっという間に時間は過ぎ、駅前の周辺ではネオンが輝き始めてくる。
今日、遥はバイトがあるので、今頃向かい側のカラオケ店で働いているはずだ。道路を挟んで、大好きな恋人がいる。そう考えると、無意識に顔が緩む。
あと、数時間──
待ち遠しくて堪らない。
疲れた心を癒すには、遥に会って抱きしめるのが一番だ。出来ればキスもして、高揚させた頬にかぶりつきたい。
店自体は8時には閉める為、シャッターを半分下ろしレジの集金を済ませ、遥のバイト終了までアシスタントをするのが日課だ。
──11時。
ミモリにすっかり怒られた守道も店を一緒に出る。原付に跨り「また明日ね〜」と手を振り、守道は帰っていった。
虎は、自転車を押しながら歩道を渡ると、カラオケ屋の前へと向かう。
「お疲れ様でしたー」
「した〜」
数人のバイトの子らが、丁度、裏口から出てきて一番最後に遥の姿が見えた。
遥も虎の姿を確認するやいなや、虎の元へ駆け寄ってくる。
「虎さん。お疲れ様です」
にへっと、柔らかい笑顔を向ける遥に虎もつい笑顔で返す。
「行こっか」
自転車を押しながら、二人は夜の駅前を後にした。
住宅街を進み、遥を家に送る為にゆっくりとしたペースで歩いていく。仕事帰りのサラリーマンと数人すれ違うだけで、街頭以外辺りは人も居ず真っ暗だ。
「…夜、やっぱりちょっと冷えますねぇ」
長袖を指先まで被せ、遥はこすりあわせた。
「ほら」
差し出された手を、遥はきょとんと見る。
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