◇◆◇

店先の脇に自転車を止めて、虎は預けられている鍵をポケットから取り出しシャッターを開けた。人並みがまだちらほらとした、物静かな駅前に、ガラガラと重い音が響き渡る。
更に、木彫りの入り口の鍵を開けると、次はカランカランと明るい鐘の音がした。
店内の空気が入れ替わり、心地よい朝の光が店内を照らす。
虎は、奥のレジを過ぎ、作業場へと足を踏み入れた。
八畳程の小さな間取りに、木目模様の机が四つ並び、壁際には作業用の道具や機械が無造作に置かれている。本棚には沢山のファイルや本が所狭しと敷き詰められていた。

すると、何やら机の向うで人の足が見える。
近くまで行き、床で俯きに死んだように眠っているその人物の肩を揺すった。

「守道さん。朝ですよ。またこんな所で寝てたら風邪引きます」

揺さぶりに繭をしかめながら、守道は唸りながら腰を浮かす。
虎は、備えられている台所に行き湯を沸かして、コーヒーをコップに注いだ。

「ミモリさんに怒鳴られますよ」

その言葉に守道は目を見開き、体をシャキッと起す。虎の入れた熱いコーヒーを、一気に飲み干し、空のカップを天井に向けた。

「やぁ!おはよう虎くん!いい朝だねー!」

そう言いながら、火傷した舌にヒイヒイ言いながら、守道は「ミモリはまだ来てないよね!?」と周りを見渡しながら、部屋の隅に備えられた棚のカゴから下着と着替えを取り出すと、足早に店を出て、銭湯へと向かっていった。


(2/30p)
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