コン○ーム事件

俺の昔からの親友が、ある日突如「男を好きになってしまった」と、告げてきた。
別に軽蔑など感じた訳じゃなく、ただ率直に応援をしたいと思った。
それはきっと俺だけじゃない、その場に居た良之助と泰司も同じ気持ちだった筈だ。


それから、しばらく。
なぜそうなったのかも、今考えればただ単に俺たちが子供だったのかもしれない。
そう、その事の発端は、本当にただの興味本位から始まったのだ。





コン○ーム事件





とある日。
学校帰りに暇だった良之助は俺、光の部屋へと遊びに来ていた。はっきり言って俺の家は広くはない、自室が4畳半と言う狭さの上背丈がでかい俺達が居れば、狭さ百倍だ。良之助の12畳の自室のが明らか広くて有意義なのに。何故かこいつは俺の部屋に居座る癖がある。全く理解できない。

「なぁ。光、どう思う?」

俺に前髪を結んでもらいながら、良之助は髪ゴムを伸ばしては縮まして遊んでいた。良之助の意図が判らない質問に「なにが?」と返事する。

「この間、虎が言ってたのだよ」
「あぁー、遥ちゃんのこと」
「そう。男を好きになるってどうゆーんだろ?」
「さー知らね」
「経験ない?」
「あるかアホ」

ふーん、と鼻で返事をした良之助の頭をパァーンと叩いて髪型が完成した事を告げた。と言ってもパイナップルのように前髪をくくっただけだが。

「さっすが美容師の息子!」
「そんなの誰でも出きるわ」

不器用な良之助には感動モノだったようで、鏡に映った自分のパイナップルをちょんちょんといじっている。
俺がピンやクシを片づけていると、またもや良之助に質問をふっかけられる。

「もしさ、虎と遥ちゃんが付き合ったら、あれだよな、ヤるんだよな?」

とんでもない質問に、持っていたピンを手から滑り落としてしまい床に散らばった。折角片づけたのに。
まとめて自分のヘアーセットを入れてある引き出しに仕舞うと、窓側の壁にもたれ掛かるように座った。

「まぁそうなるけど」

聞くなよそんな事。

「男同士かぁー。どんな感じか知ってる?」
「知るか!お前そんなの興味あんの?虎のは応援するけど俺自身は全く興味ないからな、知る訳ないっての」

すると、良之助はなにやら少し考えて、閃いた!と、言うように古典的に両手をポンと着く。瞬時に嫌な予感が全身を電光石火の如く走り抜けた。

「なぁ。試してみねぇ?」

ほら、きた。予感的中。

「俺、光ならイイかも」
「なーにーがイイかもだ、ボケ。等々頭わいたか。」

はぁーっと頭に手を突き溜め息を付くと、呆れた表情で良之助を見た。良之助は、変なこと言った?などと謎な事を言っている。今のが普通な事だとでも言うのか!これだから、能天気坊ちゃんと言われるんだ、本人は気付いていないけど。

「大体なんでそこで俺が絡むんだよ、勘弁してくれ…」
「え〜なんでなんで。いーじゃん。何事も経験かもよ?」

にこにこと満面の笑みで微笑む良之助。
こいつはまじバカだ。誰か助けてくれ!

「他当たってくれ!あ、泰司は?仲いいじゃん。あいつに頼めよ」
「はぁ〜?無理。あんな暑苦しいの」

お前らの友情っていったい…。まぁ、確かに泰司と事をしている想像しただけで何かが暑苦しいな。いや、だからって俺も却下だ!

「あーもう。めんどくさい。襲っちゃえ」

ドタンッ
ゴンッ

「いてっ!…ッ」

いきなり覆い被さってきた影に勢い良く横に倒されて、後頭部を雑誌の角で強打した。結構痛いんだぞ雑誌の角は!しかも月刊の漫画雑誌だ、この角は殺人道具にもきっと使えるだろう…なんて馬鹿な事を考えてる間に、自分の唇に生温い感触が伝わってきた。
こ、れ、は、も、し、か、し、て、

「──んっ…良之助!」
「うがっ」

力強く顔を押し上げて、跨る良之助を背中から蹴り上げる。
何て事だ!何て事だ!キスされてしまったー!
実験的にヤるにしろ、キスが必要なのか?必要ないよな?!
ぐらぐらと困惑する思考の中で、俺の上で若干体を浮かした良之助を睨みつけた。

「も〜痛いし!黙れよ光ー」

ブーッと口を尖らせて腕を両足で抑えられる。両手の身動きが取れない。

「黙ってられるか!どけーっ!!」

良之助の性格上、本気で興味が湧いた事は何が何でも真っ当すると言うのは判っていた事なので、本気で貞操の危機が押し寄せてくる。
にじり、にじりと近寄ってくる良之助の手が胸元を触れてきた。

「ぎゃー!!ままままじ辞めて!!俺のボディーは女限定だ!てかまず俺下とか無理だからホント勘弁しっ」

いや、そうゆう問題じゃねぇーだろっ!
なんて自分に突っ込みを入れつつも、必死の抵抗で両足をばたつかせる。

「じゃあ、俺が下?ないわ〜」
「いやっお前のが下向きだろ!?」

身長は同じく170センチ台だが、まだ良之助のが容姿的に綺麗度が高めなのである。それ以前に、男で親友のダチとヤりたくないんですが。
その時、ふと良之助の力が弱ったのを感じ、その瞬間を見計らって体をお越すと、良之助は後ろに大きくひっくり返った。同時にゴンッと音がし、お次は良之助が後頭部を強打したようだ。強打物はティッシュ箱の角。俺のティッシュ箱はメタル仕様だ、さぞ痛いだろうに、ひひひ!
良之助がグオ〜っと悲痛の雄叫びを漏らしている。形勢逆転に惜しくも阻止されてしまったと残念そうな顔をしている良之助に俺は真顔で見下ろした。

「お前が脱げ。」
「は!?」
「ヤるんだろ?ヤってやろ〜じゃねーか。お前が尻出せよ」

もういい、この際良之助が言った「何事も経験」を楽しもうじゃないか。多分今拒否し続けても毎日貞操の危機を感じるよりはずっとマシだ。何だかやけくそ感がたっぷりだが、そのまま良之助の両手を床に押さえつけてニタリと微笑む。額に怒りマークを添えて。

「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁあごめんなさああーー!」

その数分後、良之助の第二の雄叫びが響き渡った。



◇◆◇



翌日。



キーンコーンカーン…

今日は虎が遥と初の2人、しかも室内デートらしく、終業チャイムと共に忙しなく席を立った。

そんな虎を待伏せするべく俺と良之助と泰司が廊下に出る。三人に囲まれた虎は、瞬時に嫌な予感がして顔をひきつらせていた。
良之助がポケットから一つのコンドームを取り出し、虎に託すと、続いて泰司と俺からも両手から溢れる程のコンドームの山をプレゼントを贈った。

「避妊はしっかりな!」

俺達はそう言い残すと、一目散に逃げ出した。







「お前らよく知ってるな。男同士でもコンドームって要るんだな〜」

泰司が屋上のフェンスから部活の準備をする生徒達を見下ろしながらそう言った。
良之助と俺は無言でお互いの顔を見合うと、座り込んでいた良之助は立ち上がり泰司の横に並ぶ。

「じゃないとお腹痛くなんだよ。男同士も大変だよな〜」
「へーそうなんだ。俺知らなかった」
「え〜こんなの常識だよ〜」

そんな二人の会話を聞きながら、屋上の床に座ったまま煙草を取り出す。

「よく言うわ…」



良之助がガリ股歩きになっている理由は、二人だけの秘密。


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