※年齢操作(大学生くらい)・同棲設定
※最中の描写はありませんが、事後+そういう内容なので一応ご注意





(そうだ、弁当、作らないと)
ひんやりとした空気が肌に触れて目が覚めて、最初に思ったのはそんなことだった。当番制で割り当てたいくつかの家事、今日は風丸が昼食用の弁当を作る順番の日だった。
明け方ちかくまで何度も重ねた身体はひどく怠く、重かった。暑くて剥いでしまったのだろう、横向きにした体の腰まわりに纏わり付いているタオルケットを、頭が覚醒するまでと肩を覆うように引き上げる。ふと目に入ったのは、正面にある豪炎寺の胸元だった。視線をそのまま顔までなぞらせる。閉じられた瞼、規則正しい寝息。あどけない寝顔は出会ったころから変わっていなくて、どこか安心する。起こさないようにそっと頬に触れる。温かな弾力に、ふっと笑みがこぼれた。愛しい恋人のありのままの姿や表情には、言葉にできない幸福感をおぼえる。
暫し彼の寝顔を堪能して、そろそろ準備をしようと努めて静かにベッドから抜け出そうとする。タオルケットをそっと豪炎寺へかけなおし、台所へ向かおうと腰を浮かせたその瞬間、
(────っ!)
慌てて床へ座り込んでしまった。
内腿を伝う生温い感覚。失念していた。昨夜の名残が、漏れ出てしまった。恥ずかしいやら気持ち悪いやら自己嫌悪やら、色々な感情が渦巻いてその場から立てなくなってしまう。どうしよう、と頭が回転を始めたそのタイミングで、後ろから強く手を引かれ、ベッドの中へと連れ戻された。頭まですっぽりとタオルケットを被せられたかと思ったその空間は、恋人の腕の中だった。
「ご、豪炎寺、」
「……平気か」
優しく頭を撫でられて、無理させたな、と囁かれれば、その言葉が何を示しているか嫌でも分かってしまう。途端に数時間前までの性行為を思い出し、顔が赤くなる。付き合って何年も経つけれど、どうしてもこの羞恥には慣れることができないでいる。
「へいき、だから…俺、弁当つくら」
「いい」
ぎゅうと腕に力を込められて、言葉が遮られる。「途中で買うなり学食行くなり、どうとでもなる」
豪炎寺の雰囲気が、再び微睡むようなものに変わる。時計を確認すると、学校へ行く支度を始める時間まではかなり余裕があった。すでに瞳を閉じて、二度寝に入ろうとしている豪炎寺がどこか可笑しくて、つい頬が緩んでしまう。その表情がばれないように、風丸も豪炎寺の胸元に額を預けた。瞼を下ろせば、豪炎寺の体温や匂いに満たされる。足の間の不快感も、いつの間にか薄れていった。
射しはじめた朝日を吸収して、ひんやりとしていたベッドが温もりを持ちはじめる。このまま寝坊しそうだな、と思いながらも、風丸の意識は再び眠りに落ちた。

10.ベッドの中
:110218


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