ぼくは最後まで、風丸さんを追いかけているだけだった。
サッカー部の助っ人を始めたときも。全国大会に出場したときも。旅を始めたときも、サッカー部のみなさんの敵となったときも。すべて、いつもいつも。事の全体なんて知らなかった、ぼくは、風丸さんのことだけを見ていたから。風丸さんが早く戻ってこないかなあって、思うばかりで、風丸さんはいつも風のように素早くぼくの前からいなくなってしまうから、この思いを伝えることもできなくて。どれほどの時間が経ったんだろう、巡ったのは数回だけのはずの季節が、何度も何度もぼくを追い抜いていった気がする。ぼくは置いてけぼりだった。けれど風丸さんの背中を眺めているだけでもぼくはしあわせで、早く並んで走りたい、少しばかりタイムの縮んだぼくの走りを風丸さんに見てもらいたい、その一心で、ぼくは、風丸さんが戻ってくるのを待ち続けた。ひたすらその背中を追い続けた。
けれど。
ぼくは、気付くのが、遅かったんですね。
風丸さんは戻ってくる人じゃなくて、走り続ける人でした。走り続ける人を追いかけるだけ、待つだけでは駄目に決まっていた。追いつかなければならなかった。気付いたときには、風丸さんとぼくの距離は、ぼくの足では追いきれないほどのものになっていた。
あれから二度目の春です。
ぼくは、中三になりました。

この雷門中のグラウンドで、雷門中陸上部のユニフォームを着て、ぼくたちが並んで走ることは、もう、    。



07.桜舞い散る季節
:110206


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