※よくわからないことになってますが童話(眠り姫)パロディです。眠り姫→風丸、姫を助ける通りすがりの青年→豪炎寺 って感じで(非女体化)



「あの、もしかして修也様ですか」
目覚めた姫は、青年の顔を見てまずそう言った。「ああ、そうだ」いかにも。何故知っているのか問うと、眠っている間ずっと同じ夢を見ていたという。悪しき魔法使いに呪いをかけられ、いばらの森で眠りつづける姫をとある青年が助けに来るという夢を。目覚めた姫に青年が名乗り、なにか言おうとするところで映像はループしていた、らしい。
「───……そ、それで、あの」
徐に、姫が微かに頬を赤らめてもじもじとしだした。右手が唇に添えられていて、聡い青年は姫が何を言いにくそうにしているのか瞬時に理解した。青年はさっと真剣な顔になり、姫に頭を下げた。
「無礼をお許し下さい。眠り姫は口づけによって目覚めるという伝承を信じ、俺はあなたに触れました」
その通りだった。数多の刺客を薙ぎ倒し、いばらの蔓を払い、姫のもとへたどり着いたとき、その美しさに半ば吸い寄せられるように、青年は姫にキスをした。枕に散った髪は大人びた水色に光り、中性的な顔立ちをした表情はまるで西洋の人形のようだった。いわゆる一目惚れに近いものかもしれない。だが、姫の感情を考えたら、罰を受けても仕方のない行為だと青年は思っていた。だからこそ素直に頭を下げた。そして姫の表情を伺おうと顔をあげると、
「………っ、じゃあ、謝るのはこっち、だ」
「……?」
とても気まずそうな顔をしていた。若干俯いていて、視線は姫自身の足元に向いていた。
「俺は姫なんかじゃない。姫の一番近くにいただけのただの家来だ。……それに、もうわかったと思うけど、」
視線だけで青年をちらと見て、
「俺は、男だ」
と告げた。

姫が眠りに落ちたと触れ回っていたのも、いばらに囲まれたこの空間を用意したのも、かの悪しき魔法使いだ。情報が交錯してこのような事態が起こり得たのだろう。姫をかばって、なにか強い魔法を受けてしまったところまでは覚えている、と姫──もとい、家来の彼は言った。
「申し訳なく思う。姫を助けにきてくれたのに、…き、キスまでしたのに、正体はただの家来で男だなんて、本当に」

だが、青年にはどうでもいいことだった。
「知っていたぞ」
「へっ」
「影武者のようなものなのかと思っていた。男だと分かったうえで、俺はそうしたんだが」

ここで嫌悪感をあらわにされたら、大人しく身を引こう、正当に罰を受けようと思っていた。青年が青年に心を奪われるのは、一般的な感情ではなかったからだ。だが、そう分かっていてもなおこの気持ちを伝えたかった。それほど強く、青年はこの家来の者に惹かれてしまっていた。
いっそ引いてくれればよかった。だが、彼は目こそ見開いて驚いているようだが、視線は逸らさず、こちらに気を向けている、ように見えたので。
「……あなたの本当の名を、聞いてもいいか」
「、か、風丸、だ」
こういう始まりも悪くないのではないか、なんて、青年は期待してしまうのだ。

04.深い森の迷路
:110130


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