ある種の病気なのではないか、とさえ思わせた。彼はあまりに餓えていた。他人という存在に、である。
「好きな子ほど虐めたい」とはよく言ったものだ。彼は他人を求めるあまり他人を虐げるのである。というよりは、侮蔑する。自分自身ひとりいればいいと口にさえする。何をそんな恐れているのかと哀れでならなかった。感情の働きが近い同世代の仲間たちは騙せても、私の目は欺けない。大人であり監督であるのをいいことに、この哀れな子どもの皮を少しばかり剥いでみた。そうすればどうだ。彼の中身は、薄っぺらい皮膚一枚を隔てただけで、空っぽであった。先の見えない闇。虚像ですらない空間。そんなところだろうと薄々考えてはいたが、人一人ぶんが入ってしまえそうにぽっかりと空いたそこは、まだ誰も踏み入った様子が無さげである。ということは、このまま私が足をかけてしまったら、後戻りが出来なくなるのではないか。そんな危惧が頭を過ぎった。だがそれも一瞬だった。皮を剥いだのは紛れも無い、私だ。その時点で、私は彼の空洞に爪先を踏み込ませていたのである。それを引っ込めることなど許されなかった。私自身が許してはならないと告げていた。ずぶりと、彼の闇に私の半身が埋まる音がした。



あの日の孤独を捨ててしまえる程の愛がほしい

(title:馬鹿の生まれ変わり)
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