洗面所へ顔を洗いに行くと姉がいた。邪魔だとすっかり女らしくなった尻を叩けば、いたあい、と甘ったれた声が返ってくる。気色悪い、と素直に言ってやった。
「なに姉貴、どっか行くの」
「別に。なんで」
休日の朝だというのに姉はすでに着替えを済ませ、髪にドライヤーをあてていたから、どこかに出かけるのかと思ったが違ったようだ。むしろどこにも行く予定ないよ、とご丁寧に付け足してくれた。「いや、着替えてたから」と自分も答えると、それに対して、はあ?と睨むような目をこちらに向けている。
「身だしなみでしょお。何言ってんのアンタ」
いやいや、と内心で突っ込む。寝間着でなければ何でもいいのだから、Tシャツにジーンズだとか、パーカーにスカートだとか、いくらでも適当な恰好をすればいい。なんだってそんな派手で面倒臭そうな服を着ているのだ。それをそのまま伝えたら、
「これがあたしの普段着だもん」
だそうだ。何だか会話が面倒になった。結局使わせてもらえない洗面所をあとにして、先に朝食を摂ることにした。予定がない日くらい、もっと楽に過ごしたらどうなのだろうか。格好といい、顔を覆う化粧といい、窮屈そうなのである。生き急いでいるようにしか見えないのである。世の女すべてがそうだとは思わないが、面倒で哀れな生き物だなと思った。




姉との数え歌 /100412
(title:たかい)

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