どうしてこんな事になったんだっけ。
たしか風呂借りて、シャツが見当たらなかったから立向居に確認しに部屋行って、それから、
「ぅわ! ちょ、立向居っ」
甲高く跳ねてしまった声が恥ずかしくて、両手で口を塞いだ。綱海の体を跨いで、脇腹やら胸やらに触れてくる立向居に非難めいた視線を向けると、獣のようにぎらぎらとしているのに、後輩らしい幼さも残した瞳と目が合った。
「ごめんなさい、綱海さん」
でも綱海さんのせいですから、なんてしれっと立向居が言うものだから、さすがに綱海もされるがままではいられない。肘をついて上半身を起こそうとしたのだが、そのタイミングで立向居は、やわやわと下半身に触れてくるのだ。焦れったくて、熱が急に集まっていく感じがして、全身から力が抜けてしまった。
「ひ…っ、こ、ら、立向居っ!」
喉が引き攣った。無遠慮にズボンを掴んだと思ったら、そのまま下着ごとずり下ろされたのだ。外気に晒されて震える下肢に触れる立向居の指は、ひどく優しい。ゴールを守る大きな手が、綱海の性器に添えられた。
「…ふ…、っン…!」
羞恥のせいでゆるく反応していたそれが、本格的に頭を擡げ始める。鼻から抜けた声も、性器に触れられているというこの状況も、もう何もかもが恥ずかしくて顔を背けたら、今度は首筋にキスをされた。
「綱海さん、かわいい」
「バ…っ、たちむか、っぃあ!」
ちゅう、と肌に吸い付く音と、下のほうからぬるついた音がするのはほぼ同時だった。立向居の空いている手は好き勝手に綱海の肌を撫で回し、あちこちから微細な愛撫を与えられて、綱海は既に限界に程近いところにいた。他人から刺激されるのは初めてであったし、襲い掛かる羞恥もその反応を手伝っていたから仕方ないといえば仕方ないのだが、綱海の男としてのプライドが達することを非とした。(だってこんな早くイっちまうとかありえねえだろ!)
だが本人がそう思っていても、それもまた許さなかったのが立向居であった。我慢しちゃダメですよ、と笑顔で告げながら、性器をより卑猥に擦り上げる。先走りによるぬちゃぬちゃという音がして、綱海は羞恥で今度こそ死んでしまいそうになった。
「や、やめろって…立向居、マジでっ…! っひ、ああぁッ!」
巧みな手淫に、気付けばプライドなど何処かへ放り投げていた。他人の手によって追い立てられているという堪え難い現実と、限界を訴えている中心部を解放してほしいのとで、綱海は理性も精神すらもぐちゃぐちゃだった。こんなことがあっていいのか。そもそも何故こんなことに。堂々巡りの自問すらどうでもよくなって、体はただ、より強い刺激を求めていた。
「…やぁ…っ、も、───…!!」
「…、綱海さん…ッ!」
搾り取るような、射精を促す立向居の手の動きに、綱海は成す術もなくその精を弾けさせた。は、は、と二人して呼吸を荒くさせて、射精直後の気怠さと青臭さの中に身を置いていた。

視覚からの刺激のせいか、綱海と同じくらいに頬を紅潮させ興奮しきっていた立向居であったが、呼吸を整えたら急激に頭が冷えたらしく、みるみるうちに顔色が青ざめていく。
「綱海さ…、おおお俺っ…!?」
綱海の精液でべたつく自分の手と綱海の顔とを交互に見て、己が仕出かしたことを把握したようだった。ばばっ、と両手と額を勢いよく床につき、ごめんなさいっ、と謝罪する。
「お、俺っ、綱海さん嫌がってたのにこんなこと…! 本当にごめんなさいっ!!」
ああ、いつもの立向居だなあ、と綱海はぼんやり思う。綱海も最初こそ抵抗していたが、その立向居にここまで煽られてしまったのもまた事実で。体を起こして、まだ伏せたままの立向居の頭に手を伸ばした。謝んなって、とそのまま髪を撫でる。
「………綱海、さん…」
「まあ、それに、その…何だ。………俺も気持ち良かったし、よ」
「!!」
照れた表情の綱海の頬はまだ微かに上気していて、はにかんだその笑顔は何よりも魅力的であった。つづきは、こんどな。そう立向居の耳元で囁いたと思うと、そのまま肩に体重を預けて、とろんと眠りに落ちた。

膝ほどまで脱げた(脱がせた)ズボンに下着、裸の上半身、そして洗いたてでシャンプーの匂いを纏った柔らかい髪。眼下には壮絶な誘惑が広がっていた、が、当の本人はすでに夢の中へ入り込んでいる。
(……綱海さん…そんな恰好で、しかもあんな台詞…!)
挙句におあずけなんて反則です、と自分を魅了して止まないこの恋人の身を、いそいそと清めて服も着せてから、毛布をかけてあげた。熱は発散されず持て余していたけれど、綱海さんの可愛い姿見れたからいいか、と立向居はひとり頬を緩めるのだった。




悪戯したくなりました /100226

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