「なんで、こういうことをしたくなるんだろうな」
そういう雰囲気になって、そう深くないキスをして、そのまま倒れるように柔らかいカーペットの上へ組み敷いて。この先に進む了承を得ようと瞳で訴えている豪炎寺に、風丸はいつもと少し異なる表情でそう応えたのだった。淡白に告げた風丸に、豪炎寺も少し驚く。豪炎寺自身の察しがいいというのもあったけれど、この状況で「何が」と問い返すのは野暮のような気がした。だが豪炎寺が答えるよりも先に、風丸がさらに言葉を連ねる。
「…だって、妊娠、とか、しないし。それに恥ずかしいのに、なんでわざわざ、するんだろうな」
「……したくないのか?」
それなりにデリカシーの無い言葉だ、と豪炎寺は自分で感じていた。だが聞くべきだとも思って問うと、風丸は少し顔を赤らめながら「そういうわけじゃ」と語尾が消え入ってしまうほどの弱々しい声量で呟く。可愛いと思って笑ったら睨まれた。
「…意味、は、俺達にはあまり無いのかもしれない」
豪炎寺からゆっくりと吐き出される言葉に、風丸は耳を傾けている。豪炎寺の体で影になっているその目元が、先に続く音を無言で待っていた。
「本能なんじゃないかと思う。俺は風丸が好きだから、したくなるんだと思う」
思ったままのことを告げたら、風丸は途端に真っ赤になってしまった。ストレートすぎただろうか、とは思ったが、豪炎寺は恥ずかしくも無ければ自分の言葉に対する後悔も無かった。豪炎寺が発する言葉はそういうものであった。照れている風丸に焦れたわけではなかったが、確認の意を込めて額にキスを落とす。すると少し控えめにだが、風丸の腕が豪炎寺の首元に回された。そして非常に控えめに、その手に力が込められる。薄く開かれた唇に気付いて、豪炎寺は風丸の首に顔を埋めた。ちょうど口元に、豪炎寺の耳がくるように。その空間にはふたりだけだったけれど、豪炎寺にだけ届くように風丸はひっそりと囁いた。

「………そうか、」
その言葉を受け止めた豪炎寺は、満足げに目を細めた。自分の言葉が恥ずかしかったらしい風丸がぎゅうと瞳を閉ざしているから、豪炎寺は額と額をくっつける。それ以上の言葉は必要なかった。かちりと合った視線で抱いていた感情すべてを共有して、そのまま至極自然に唇を重ね合わせる。豪炎寺の形よい指が、風丸の服の中に潜り込んだ。

(俺も、したいんだ。豪炎寺となら)
(それって、)



つまりは、君が大好きってことさ

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(title:zappy)

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