掴んだ腕は細かった。吸った肌は白かった。それよりもまず、腹に乗り上げる質量が軽かった。

ぎしぎしと鳴るスプリングに眉を潜めた。すると目の前で腰を揺らす少年が、にこりと笑ってこちらの頬に手を伸ばす。
「そめおか、くん」
「…吹雪、お前なんか今日おかしいぞ」
けして綺麗ではないと自覚している肌を、うっとりとした表情で撫でられる。その手を取り、タイミングを合わせて下から突き上げてやると、一際甲高く上がる声が耳に心地良い。ぞくぞくする。
「はぁ…っ、ん、どうしたんだろ…ね」
ぐりり、と埋め込んだ肉棒を腹側へ寄せられる。前立腺を掠め、それによって締め付けが強くなり、互いの下半身にとんでもない快感をもたらした。射精感を堪えていると、我慢しないでよ、と上から声が落とされる。
「いつも嫌がるじゃねえか」
「うん、そうなんだけど、」
これでも気を遣っているつもりだった。中へ出すと事後の文句がうるさいから堪えたわけだし、僕が動くよ、なんて珍しく言うからその通りにもしてやった。全てがいつもと逆だった。やたらと積極的な吹雪は、逆に儚く見える。
「なんか、全然たりなくて」
起こそうとした上半身をそっと制止され、そのまま腹に手を置いたかと思うと、ぎりぎりのところまで腰を持ち上げる。思わず呼んだ吹雪、という声に焦りが混じる。
「もっと…染岡くんで満たして欲しい、んだ」
そして吹雪はひどく辛そうに顔を歪めながら、再び腰を落とした。
肉壁を抉っている感覚が性器から伝わってくる。精を搾り取るような締め付けと摩擦、加えて上下する吹雪の下半身から結合部が覗く、視覚からの刺激。昇りつめるのはあっという間だった。
「…あ、あ…染岡く…っ」
相変わらず辛そうな表情だったが、そこには恍惚の色も浮かんでいたので、胎内へとすべて吐き出してやった。瞬間、眼前にある吹雪の性器がふるりと震える。己の中に注がれているのと同じそれを放って、ぐったりと倒れ込んだ。密着した肌が吹雪の吐き出した精液を踏んで、ばしゃりと音をたてる。倦怠感に包まれながら、胸元にやってきた吹雪の頭を撫でた。
「そめおか…くん…」
は、は、と弱々しく忙しなく吐き出される息が、名を紡ぐ。顔の向きを変えて見上げてくる表情がやたら色っぽくて、欲を吐き出したばかりのはずの下半身が再び反応してしまった。それに動揺している自分をよそに、吹雪は目を細めて、ふふ、と更に妖艶に微笑んだのだった。

「まだ、足りないでしょ。僕も、染岡くんも」


足りないのはこんな欲だけではない。何かが足りていない。きっと俺たちはこんなことばかり繰り返して、結局満たされることもなくて、戻ることも進むこともできないでいるのだ。





大人になれない子供たち /091229
(title:シャンテ

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