「うおお…さっみいな…」

キャラバンは今、雷門中に戻ってきていた。冷え込んだ東京の空気は、少年たちの肌を無遠慮に刺す。ちらつく雪は地に落ちて溶けていくが、上から上から重なれば、いずれはこのグラウンドを白く染め上げてしまうのだろう。

「そうかなあ…まだまだ、って気もするけど」
二の腕をさすり、微かにでも摩擦熱を得ようとする綱海を見た吹雪が笑う。そう言いながらも、その頬と鼻先は真っ赤だった。

「…ああ…、お前、北海道から来たんだっけ」
「うん。だから寒さには強いよ、僕」
「オレも年中海にいるからよ、寒さには慣れてたつもりだったけど」
「ふふ、種類が違うよね」
「そうそう。分かってんなぁ、吹雪」

ふわり、と柔らかく笑ってくれるのが、綱海にとって心地良かった。沖縄の仲間たちのようにノリを重視したりはせず、穏やかな会話をする。新鮮であり、何となく気持ちを落ち着かせるものだった。

肌は相変わらず痛い。手足の末端は感覚が鈍っているし、吐く息は真っ白だった。
ふと吹雪の顔を見る。視線に気付いたあと、なあに、というような笑顔を向けてきた。むず痒いような照れくさいような、そんな感情を伴って、綱海の心臓が跳ねる。ああ、と彼は自覚した。

「オレ、吹雪のこと好きだわ」
「………、え……?」
「良いなあ、こういう暖まり方も」
「綱海、くん?」
「な、吹雪、なんか喋ろうぜ」

流れるように進んでしまった会話に、少し気圧されるような表情を浮かべながらも、やはり吹雪は、うん、とはにかんでくれるのだった。返事をするように綱海もにかりと笑えば、心の温もりを共有できた気がした。
その二人の周囲を残し、空気は更に冷え込んでいく。雪は積もりそうだ。





こごえる夜に /091221

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