暗闇の中、俺を支配していたのは、鼓膜の感覚と下半身の熱だった。
はあ、と温度も湿度も高くなった息を吐くと、豪炎寺が前髪を耳にかけてくれた。だがそれは単に、肌の触覚が判断しただけにすぎない。熱が苦しくて瞳を閉ざしてしまうことは多かったが、それでも、今は光が恋しかった。
「豪炎寺…、これ、」
鉛のような重さの腕を、頭のほうへと動かした。こめかみのあたりに触れたつもりが、やはり固い布に遮られて、この闇に再び恐怖を抱く。現実を突き付けられた恐怖だった。その手を掴まれて、シーツに縫いとめられる。手首を握る豪炎寺の手も、かなりの熱を持っていた。
先程の問いかけに答えるかのように、律動が激しくなる。豪炎寺の熱を咥えこんでいるそこが、再び卑猥な音を奏で始めて、無意味な母音ばかりが口から漏れて、涙が止まらない。もしこの布からそれが滲んだら、今の状況がどれほど辛いか、豪炎寺は気付いてくれるだろうか。

「は、ぁあっ…ご、えんじ…、」
「……、風丸」

より激しくなる腰使いを安定させるためか、俺の手首はすでに解放されていた。耳のすぐ脇で握られた豪炎寺の手に触れる。ぴく、とほんの僅か震えた直後、頬に熱い水滴が落ちた。豪炎寺の汗だった。触れた手をそのまま辿らせて、豪炎寺の腕を登っていく。逞しい二の腕を確かめて、広い肩に捕まって、そして頬へ。意外と弾力のある肌を撫でながら、逆の手も空を彷徨わせる。横になっているせいもあり感覚が掴めず、最初は髪に触れた。近くに耳があると分かったので、それ伝いに頬へ行き着くことができた。俺の両手が、豪炎寺の両頬を包んでいる。気付けば律動は緩くなっていた。

「やっぱり、おまえの顔、見たい、よ」

豪炎寺の顔を引き寄せる。視界は封じられているのに、いつもの癖で目を閉じていた。俺の動きにされるがままの豪炎寺に、触れるだけのキスをする。少し下唇寄りになってしまったのは許してほしい。
唇を離したあと、笑うつもりが、情けない緩み顔になったことは自分でも分かった。すきなんだ、豪炎寺。その微笑んだつもりの表情で、弱々しく呟くと、一気に突き上げられた。突然の衝動に、体に溜まった熱も、女みたいな悲鳴も、何もかも抑えることができなくて。
視界が白く弾けたのは、欲を吐き出したためか、光を取り戻したためか。分からなかったが、豪炎寺が、俺を愛おしむように微笑んでくれた気がして、また豪炎寺の唇が欲しくなった。





くちびるさがし /091220
(title:けしからん

目隠しプレイ
豪炎寺は間違いなくムッツリというか 傾いた嗜好の持ち主だろう…

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