※キス描写注意








「ポーションを見つけたのか」
気持ち良さそうに瓶の中身を飲んでいるバッツに、声をかけた。その良い飲みっぷりと、美味そうにしている様が、何となく気になったためだ。

「お、ウォーリア。飲んでみるか?」
「いや、私はいい」
「いいのか?しゅわしゅわして美味しいぞ!」
「………しゅ…?」

ポーションはそんな喉ごしだっただろうか。水と似てさらりと飲めるのが、その回復薬ではなかったか。何か怪しく思ったウォーリアは、明らかに訝しむ目でバッツを見た。
「ちょっと、睨まないでくれよ。おれがちょっと改良しただけだから」
「改良…?」
「そ。ウォーリア、サイダーとか飲んだ事あるか?」
そもそもサイダーとは何だ。頭の上に疑問符を浮かべながら、ウォーリアは首を左右に振った。バッツはその様子に笑って、じゃあ尚更だな!と先程まで口にしていた瓶をウォーリアへ押しつける。
「なんか、しゅわしゅわつーかパチパチつーか!味もちょっと甘めにしたんだぜ。美味いから、試しに飲んでみろよ」
「………………」
瓶を受け取り、鼻先で匂いを確かめている。先程は拒まれたそれだが、バッツに強く飲んでみろと言われ、やはりその気になったらしい。口につけた瓶を、そろそろと上に向けていく。

「───!ッ、」

げほげほとむせている所を見ると、どうやら炭酸が喉で大変なことになったのだろう。初々しいというか、期待通りのリアクションに、バッツはにやりと笑みを浮かべた。ウォーリアは口元を押さえながら、何かを企むような表情のバッツに、あくまで冷静に瓶を返す。
「ちょっと強かったかあ?ウォーリア初めて飲むんだもんな、」
その瓶をちらちらと揺らしながら、ウォーリアに一歩近付く。やはり何か企んでいるのかと、ウォーリアは警戒心を強めた。

「じゃ、さ。ちょっと弱めれば、平気かもしれないよな」

バッツは顔を真上に向ける勢いで、瓶の中身を口に含んだ。そのまま飲み下す様子はないまま、ウォーリアの顎を押さえ付ける。咄嗟のことに、ウォーリアは反応が遅れた。

「!……ん…っ、ぅ…!」

背筋に鳥肌がたった。急に唇を塞がれて、呼吸もままならない。膝から崩れ落ちたウォーリアを、腰に手を回して支える。そしてもう片方の手で、後頭部を押さえると、
「は…、ッ……!?」
何かが、口内に流れ込む。バッツが口に含んだ、改良されたポーションだろう。
先程と同じ味が、口の中に広がる。その気泡が弾けるような感覚と、それを流し込むために差し入れられた舌が、口腔を蹂躙する。背中にぞくぞくと、妙な感覚が走った。口移しされている、という事実に、顔がかあっと熱くなる。抵抗しようという余裕も欠いていた。
「…ふぁ、んん…ッ」
ポーションが口の中を満たしはじめて、飲み下すしかなくなった。喉を滑るそれにまたむせそうになるが、バッツが更に深く唇を重ねてくる。胸に手をついて押し退けようとするも、後頭部と腰を押さえられていて、無駄な抵抗にしかならない。
舌を絡めとられて、ウォーリアから苦しげな声が漏れる。ポーションはもう飲み切っていることに気付いていないのか、そのまま口付けを甘受していた。

「……っは…、ぁ…」
ようやく口を離したときには、すっかりウォーリアの身体から力が抜けていた。倒れそうになるのを抱きとめて、バッツは苦笑する。
(…やりすぎた、かなー?)
背中をさすりながら、その震える身体を抱き締めた。

「な、美味かったろ?」
「………ッ、バッツ…!」

真っ赤な顔で凄まれても怖くはなく、むしろどちらかと言えば扇情的である。自覚がないって怖いなあ、とバッツは内心思うが、今日のところは大人しく引き下がることにした。

「また欲しくなったら作ってやるから!」
「……!!」

バッツは相変わらずへらへらと笑っていたが、ウォーリアの腕を引く力は強かった。促されるまま立ち上がると、腰が抜けたと思っていた下半身は、特に違和感もなく直立することができた。

「じゃ、おれ先に戻ってるからな!」

ウォーリアが何か言い返す間も与えず、これはやるよ、と彼の手に先程の瓶を持たせたあと、バッツは皆がいる野営地の方へと去って行く。後ろ姿をぼんやり眺めながら、ウォーリアは今の数分間に起こったことを思い返していた。

手元には、中身だけ異なるポーションの瓶。口内に残るその味と、喉に染み付いた炭酸の弾ける感覚。同時に、腰が抜けるほどの口付けを受けたことをありありと思い出してしまい、ウォーリアは再び、その場に力なく座り込んだ。





喉に残ったのは甘ったるいサイダー /091026
(title:joy)

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