(どうすれば良いのだ)

ぐるぐると渦巻く感情は初めて抱くものだった。ウォーリアにとっては煩悩とも言えるそれは、戦いにおいてはひどく邪魔になり得るもの。こんな気持ちを抱いたままで戦闘に臨むなど、自分が許せない。

しかし今は、想い人との逢瀬の時であった。
それが更にウォーリアを悩ませる。抱いた感情は、表に出しても許される状況に思えた。だがそれを躊躇うのは、何より、自分自身が恥ずかしいためだ。
自分でも何故、こんな気持ちになったのか分からなかった。どうしよう、と隣に座る恋人をちらりと見上げると、偶然なのか目が合ってしまった。

「……何を考えている?」
「え………」

外された鎧の下の素顔、ガーランドのその深い瞳に、全て見透かされているような気すらした。隠した感情は、ささやかな欲望であった。ウォーリアにとっては重い、しかし口にするのも行動に移すのもひどく簡単であるそれ。
もし、この感情を表に出したらどうなるのだろう。この恋人はどんな反応をするのだろう。目を合わせたまま再び考え出すと、もうどうしたら良いか分からなくなって。
体が勝手に動いていた。


「……!? ラ、ライ…」

両手で、首のあたりに回った部分のマントを掴んだ。鼻先に近付いたガーランドの表情は、あからさまに狼狽の色を浮かべている。もう少し見たいな、とぼんやり思ったが、唇が触れたので目を閉じた。




自分から唇を塞いだのは初めてだった。
舌も何も絡ませない、ただじっと触れるだけのキス。
顔を離すと、欲が満たされた充足感を追って、とんでもない羞恥がやってきた。そのせいで急速に、涙腺が刺激されて。

「う……ッ」
「ライト!?」

もう、どうしようもない。
涙を隠すために、ガーランドに抱き付いた。慌てるガーランドも貴重だったが、それよりも、再び湧いてしまった感情をどうにかしたかった。

(いつの間にこれほどまで惚れてしまったのだ、私は…!)

恥ずかしい気持ちと、たまらなくガーランドを愛しく思う気持ちが、ウォーリアを満たした。どうすれば良いか分からず、ただただ涙がガーランドの肩口のマントを濡らしていた。
だがどうすれば良いのか分からないのはガーランドも同じだった。とりあえず背中に手を回して、しゃくり上げる体をさすってみる。

この二人がもう少し器用になるのは、まだ先の話。





流れる涙とひきかえに得たものは /091014
(title:joy)

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