溢れると言うより、漏れると言ったほうが近いかもしれない。

「し、しお」
自分で思っている以上にその光景に圧倒されていたのか、声が中途半端に擦れた。それに応えるように振り返った、完全変化した志々尾と目が合って、無意識にごくりと喉が鳴った。きっとこの感じは、志々尾から漏れている妖気なのだろう。そういう、何かを察知したり読んだり、といったことが得意ではない俺でも分かるのだから、相当なものだ。
───大丈夫なのか。
柄にもなくそんなことを考えてしまって、我に返ると、志々尾はまだ俺の目を見ていて。それがどこか、なに心配なんかしてんだ、とそういう風なことを言われている気がして、
漏れている、と感じた妖気すらも、溢れ出る志々尾の力の象徴のようで。

何だか、涙が出そうになった。





最期のはじまり /090930
(title:joy)

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