もっと。
もっと、もっとだ、

指先の鋭利に、妖の血液が飛び散る。肉を引き裂く感触のあと、赤黒く色づいた骨が見えた。片膝をついて着地すると、空中で切り裂いた先程の妖が、目の前にぼとぼとと落ちて、崩れていく。
何故だろう。
いつも妖を狩るときは、無心だった。それが当たり前だと割り切っていた。けれど少し前から、そうやって原型をどんどん失っていく妖を見ていると、虚しくなる。俺は何を、何のために、こんなことをするんだ、そんなことを思ってばかりだった。

でも、
何故だろう。
今ではその虚しささえも飲み込んで、妖を見つけたとき、妖を追いかけているとき追い詰めるとき、そして仕留める瞬間。
もっと、
深く、深く。
そうやって、どこで得るのかも、何によって感じるのかも分からない、束の間の感覚に追い立てられるように、俺は、自らの首を絞めていることも知らずに、追い掛ける深さをどんどん増していく。





けものの見る夢 /090930
(title:けしからん)

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