下らない、と自分の中では既に紙屑同然となったそれを投げ捨てた。魔法で焼く気すら起こらない。
しかし地面に落ちるような音がしなかった上に、微かではあるが背後に立つ何者かの気配を感じて、振り返ってみると。

「……何をしている」

アルティミシアが先程投げたそれを、屈んで拾ったのはセフィロスだった。どうやら彼の足に当たってしまったらしい。
「…これは失礼。あまりに陳腐な内容だったものですから」
「絵本か?魔女はこんなものも嗜むのだな」
笑えない冗談だと思った。絵本を捨てたのは事実だが、この男を相手にするのも面倒だった。だが、それを知った上でこちらに絡んでくるのがセフィロスという人物だ。独特の笑みに対する嫌悪感は隠しながら、話くらいはしてやろうとセフィロスのほうへ向き直る。ぱらぱらと本をめくり、中身を眺めていた。

「………貴様の世界とは用いる言語が異なるようだな」
「そう…それは残念ね」
「目の前で投げ捨てられた本を拾ったら、内容くらい確かめたいものだがな」

意外にも、その本に興味を持たれたらしい。暗に内容を説明しろと言っているようだ。わざとらしく溜め息を吐く。

「それによれば、美しいと思う者の血肉を食べると、永遠の時を共有できるそうです」
「…ほう」
「下らない。時とは、支配するもの」
「貴様の持論とは異なっているのだな」
「…本なんてそんなものでしょう。欲しかったらそれは差し上げます」

やはり面倒だ。勝手に話を切り上げて立ち去ろうとすると、男が徐に含み笑いを発したので、思わず再び振り返ってしまった。

「面白い話じゃないか」
「…………」
「ヒントも得られたことだ、私も出かけるとしよう」
眉を潜める。ヒントなど与えた覚えは無い。相変わらずこの男のことはよく分からなかった。
「……どこへ行くのです?」

「なに、」
男の声と共に、ばさりと羽織っている服が翻った。

「食事をしにな」



消えた気配を確かめながら、秩序の一員である兵士の姿を思い浮かべる。あの青年も可哀相なものね、とぼんやり考えた。





美しい人を食べたら /090928
(title:Carmen

ミシアさんの喋り方がわからん
ちなみに私にカニバ趣味はありません

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