唇を離すと、うっとりと潤んだ瞳と、微かに赤く染まった頬が目に入る。はぁ、と切なげに漏らされた息に少し腰が重くなり、複雑な感情を抱く。

身に着けた鎧も、その下を守っていた衣服も既に剥いた。俯せにし、晒された背中をゆっくり撫でると、いちいち震えるのが愉快だった。
「ライト」
名を呼び意識をこちらへ向かせてから、その片手を掴むと、何をされるか分かっていない様子のライトが振り返ったので、あまり怖がらせないようにと笑いかけてみた。引きつっていたかもしれない。
手を出来る限り伸ばさせて、秘部へと近付ける。するとさすがにライト自身も察したのか、腕が強張り、弱々しくも抵抗を始めた。

「な…にを、…ガーランド…!」
「わしのこの手では、かえって傷つけてしまうだろう」
ライトの指を広げさせ、自分の手を重ねながら先端を掴んだ。その指先で、後孔をなぞらせる。それだけで、体全体が大きく跳ねた。
「ッひ…ゃ、やめ……っ」
多少無理な姿勢をさせているせいもあり、色を含んだ声は簡単に上がる。再び重くなる下半身を抑えながら、抵抗が本気になってしまわないうちに、ライトの指を中へ押し込んだ。
自分が導くまま指を前後させれば、腕の力が抜けていく。しばらくそうさせて、卑猥な音が響き始めたのを確認し、指を増やす。もともと快感に弱い身体ではあったが、自分の指で慣らしている、という事実に対する羞恥もあるのだろう、感度はひどく良く、ライトの秘部は簡単に濡れた。そのまま更に一本、指を増やさせる。

「ぅ…んん、っ…やめ…ろ…ガーランド…っ」
「どの口が言うか…これだけ感じておるというのに」
「…っ! …ぁ、ああ!」
空いた手でもう少しばかり腕を引き、指を深く押し込んだ。過ぎる快感にか羞恥にか、瞳が更に潤みはじめる。泣くでない、と雫を掬うように目元を拭ってやると、こちらを睨んでくる。
───自分に刃を向ける時と同じように。
ひたすらに真っ直ぐこちらを見つめる、あの瞳で。

腕を持ち上げて指を引き抜いた。それだけでびく、とまた面白いほど身体が跳ねて、気紛れにライトの腹と地面の間に手を差し入れてみる。熱の中心を握り込んで、そのまま数回撫で上げると、あっけなく達してしまった。どうやら我慢していたようで、珍しく息が上がっている。しかしガーランドは、休ませはしないとでも言うように、身体を仰向けにさせた。
「っは…ぁ、あ…」
一回達して弛緩している身体から、吐息のような喘ぎが漏れた。その薄く開いた唇に誘われるように、ライトの顔を覗き込む。虚ろな瞳に自分が映されていることに安堵して、自身も前を擡げさせた。

「ぅ…あ、ぁあ…ぁっ…!」
ライト自身の指で慣れさせたそこに、更なる熱が入り込む。いくら濡れているとはいえ質量に差がありすぎるのか、ライトは苦しそうに呻いている。額に数滴浮いた汗を拭き取るように撫でてから、頬に手を添えると、熱に浮かされ細められた目が少しひらいた。
安心させるように、額にキスをした。直後、ライトからふっと力が抜けるのを見落とさなかったガーランドが、更にライトの奥へと自身の熱を押し進める。
「く…ッあ、ぁ!」
「……ライ、ト…」
ガーランドも、詰めていた息を吐き出した。
ライトがよく感じる場所は、的確に記憶している。互いが焦らすのも焦らされるのもあまり好きでないことは分かっていたし、早く快感だけを追わせるためにも、ピンポイントにそこを突いた。すると目が見開かれて、止めどなく声が溢れていく。

「は…っん……、ひぁ、ぁああッ!」
「…ライト…」
快楽に翻弄されて涙を零し始めたころに、頬を包み込むようにして髪を撫でてやると、怯えた瞳でこちらを見つめてくる。溺れてしまうことに恐怖するのは、この戦士の癖のようにも思えた。何度抱いても、輪廻によってリセットされた精神であっても、いつだって、その瞳は自我を保つ強さを忘れなかった。

「大丈夫だ、ライト」

そうしていつだって、自分のもとへ堕としてきた。
何度次元を遡っても、何度この戦士と出会っても。堕ちる瞬間の、葛藤を含みながらも快感に正直になる恍惚とした表情はたまらなかった。
自分は、この人間に惹かれ続けている。
それなのに、そのたびにこの人間は記憶を失っている。自分ばかりが、輪廻に弄ばれているとすら感じた。

(溺れているのはどちらだろうな)

葛藤していた思考は、首に回されたライトの腕によって引き戻された。意識が離れているのを悟られたのか。掠れた声で名を呼ばれ、あくまで理性を失わない声で、続きをねだってくる。
ごちゃつく思考は捨てることにした。戦士はすでに堕ちた。あとはもう、好きに貪ってしまえばいい。

(───いっそ、)




記憶なんかいらないのに






/090926
(title:joy)

気持ちこれとリンク
えろは難しい…習作ということでひとつ
簡素な描写を心がけたい

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