「孤独が間違いだとは言わない」

孤独だから何だというのだ。目的は見失っていないし、一歩一歩は大きくないが、着実にクリスタルへ近付いてもいる。自分が辿り着かなくてはならない場所まで、一番迷わない道がそれだと分かっているからこそ、孤独を選んだのだ。
「だがそれは、実力が伴っていることが前提の話だ。私にすら勝てないその程度の力で、どう混沌の軍勢に立ち向かおうと言うのだ」
首に触れるか触れないかというぎりぎりの距離に突き立てられた剣が、皮膚に触れた。ひんやりとした無機質な温度と、一瞬も逸らされることのない正面からの視線に、背筋がぞくりと粟立つ。同じ秩序の戦士であるはずなのに、この男なら何かやりかねないような、冷たい殺気が微かに存在していた。
「───それでも、君は孤高を貫こうと言うのなら」
殺気が、一気に色濃いものになる。
剣からは手が離されていたが、この隙の見つからない体勢と、突き刺さる視線だけで、本能的に身の危険を感じた。

「私が、その精神を正してやろう」
それも私の使命だ。

味方を光の方向へと、正しい方向へと導くことができるからなのか。
若しくは、
制裁という形で、剣を揮うことができるからなのか。
理由は分からなかったが、横たわる自分の腹へ足をかけてくるこの戦士は、今の状況に合わぬひんやりとした微笑を浮かべていた。後者だとは考えたくなかったが、そう思わざるを得ないほどに、その表情はつめたかった。

───この男は、狂っている。





やさしい狂気に満ちている /090925
(title:joy)

こんなWOLさん嫌だ

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