※誰かさん×クラウド
※微妙に現パロ
※どんなクラウドさんでも許せる方はどうぞ











思わず反った喉に、ひやりとした風が走る。その冷たさに頭が現実を思い出し、また妙な声が漏れた。

その姿勢のまま、視線の先にある窓の、そのまた先の夜空を眺める。部屋の電気はついていないのに、何故こんなに明るいのか、それは今夜が満月だからだ。そんな、すぐ考えれば分かる事も瞬時に答えが出ない程に、脳が蕩けている。ついでに体の別の箇所もそういう感じで、もう体を動かす気力がすっかり無かった。
ただ丸いばかりの満月に、逆さまも何も無い。視界の隅に映る机や、窓に張り付いているカーテン、当たり前の様に逆さまで映るものたちが、
ここが自分の部屋なのだと嫌でも気付かされる、そのあまりにも現実離れした事実に、思考が追いつかなくて溺れそうになる。

腹の辺りに触れた素手が、氷の様に冷たかった。シャツもだいぶ前から開いているので温度差に驚く事は無かったものの、無機質を思わせるそれに、体が自覚なしに震えた。それを面白がってか、執拗に脇腹やら腿やらを撫でてくる手に、もう鳥肌すら立たない。
思考の遠くで、ああ、もう俺の感覚は消え失せてしまったのだろうか、と呑気に客観的にそんな事を考える自分がいた。

「良いか、クラウド」
「……ああ、」

生暖かい温度が体内から消えて、かわりに直接的な痛みと、先程の比ではない質量がもたらされた。一瞬の出来事に吐きそうになった。ダメだ、とまた喉を反らして痛みを耐えしのぐ。掌に触れていたシーツごと拳を握り締めると、既にぐしゃぐしゃだったそれが更に悲惨な事になった。その力がやっと抜けたのは、その痛む場所が段々と痺れてきてからだった。
まだ仰向けに喉が晒されたまま、目を瞑って呼吸を整える。痛いし苦しいし、快楽なんてこれっぽっちも訪れそうに無い。こんな行為に何の意味があるのか。

だが、自分を必要としてくれるのなら。手を差し延べてくれるなら、それに縋りたかった。たとえこの情事が、何の熱も生み出さない、虚空だったとしても。
うっすら瞼を持ち上げると、また逆さまなのかどうなのか、瞬時には判断のつかない満月の朧気な光。

ああ、
そうか。
月は自分達の事を見ているのだ。
この罪深き行為を正面から見据えて、月明かりで照らして、過ちを教えてくれようとしているのだろう。
見るな。そんな眩しいものをこちらに向けるな。そうして満月を睨み付けたその瞬間、熱に揺り動かされて、思考が完全に止まった。

埋め込まれているそこすらも、俺の全ては空洞だった。





汚れた星などいらぬ /090917
(title:落日)

不感症クラウド
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