「それはそなたとて同じ事だろう。ガーランド」 甲胄ごしに聞こえる低い声は、相手を攻めるような響きを伴った。 ガーランドは混沌を司る神に通じている。それは自分自身であるということは、神はおろかガーランド本人しか知り得ない頃。恐らくこのゴルベーザという男はその弟と、或いはその仲間たちにまで、遠回しに助言をしているような言動があった。弟に対しての情があるのだろう。些か優しすぎる言い方ではあるが、秩序の戦士に通じているであろう同志をさり気なく窘める事も、ガーランドの隠された役目であった。 「同じ…だと?」 「光の戦士と言ったか。単なる宿敵としてではなく…別の対象として、見ているのではないのか?」 「……どういう意味だ」 がちゃりと互いの装備が金属音をたてた。ただ警戒しているだけだった間合いが、一気に殺伐としたものになる。 「深い意味など無い。ただ、私がそなたを見ていて勝手にそう思っただけだ」 ガーランドの殺気を押し退けて、ゴルベーザはマントを翻す。 「もっと柔軟に、事全体を見るべきだろう。特にそなたはな」 そのまま、闇に溶けるように。ゴルベーザは姿を消した。 (……あやつにとって、わしは宿敵でしかなかろう) 自覚していた。 ガーランドは、ガーランドだけは、記憶を引き継いでいる。輪廻に囚われた二人は、全く同じ運命を背負ったわけではない。 自分を正そうと後を追う光。 自分を殺そうと刃を向ける戦士。 何度も何度も数え切れないほどに、自分の魂を追い詰めるその姿を、自分だけが知っている。 その気高さに、 (わしだけが、なぜ、) ───惹かれない筈が無かったのだ。 邪恋と笑えるなら恥など知らぬ /090922 (title:zappy) 三人称に自信が無い |