ふわり、
ほのかに良い匂いを漂わせる白銀に、思わず見とれた。

「セシルはそれ、地毛ッスよね」
「そうだよ」

返事をしながらセシルは、ふわり、と笑みを浮かべる。見ているこっちが穏やかになれるその笑顔は、綺麗すぎて逆に照れくさくもあった。
セシルの髪の毛に、手を伸ばす。触れてみると、空気を纏って揺れるそれは、ひどく細くて柔らかかった。

「………これくらい、キレイな白だったらなぁ」
「え?」

ティーダの呟きを拾って聞き返せば、言うのを渋っているようだった。なにが、と笑顔で尋ねたら、それに誘導されたのか、少し躊躇いがちに口を開く。

「…なんか、少し会わないうちに白髪とか生やしてたんだ、アイツ」
「………へえ、」
「ショックっていうか、なんていうか…いや別に心配なんかしてないッスけどね!…色々あっちも大変なのかなって…なんか、嫌だった」
「…そうなんだ」
「だから、セシルくらいにキレイだったら、そんな嫌に感じないのかなあ…って」

くすりと笑ってから、そんなことないよ、とセシルは言う。
「色の問題じゃあないよ」
「………?」
「もう一度行ってきたら?ジェクトの所」
あからさまに不機嫌そうな表情で、なんで、と呟かれた。しょうがないなあ、とセシルは思う。
「何か分かるかもしれないし。正直になってみた方が良いよ、きっと」

またにこりと笑いかければ、ティーダは渋々といった様子で、その場から立ち去った。
僕も兄さんを探しに行こうかなあ。ぐっと伸びをしながら、セシルものんびりと立ち上がる。



(…………あれ、)
混沌の陣営の、父がいるであろう場所へ歩み始めたティーダが立ち止まる。
(オレ、オヤジの話だって言ったっけ…?)
ぽりぽりと頭を掻きながら、セシルの笑顔を思い出す。
まあ、いいか。
早く会って、何かしらハッキリさせて、このモヤモヤを吹き飛ばしたい。そう決めたティーダは、再び前へ走り出した。





矛盾ばかりの愛だけれど /090920
(title:zappy)

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