鏡を見ているみたいだ、と子供のような感想を抱く。こんな面白いことがあるなんて、やはり旅はこうでなくてはいけない。 「おれはバッツ。お前は?」 「おれも、バッツだ」 へえ、にやりと笑いを浮かべると、相手も笑い返してくる。服装や髪の毛が違っているだけで、それこそまさしく、鏡のようだった。 「お前は、おれなの?」 「そうさ。そしてお前も、おれだ」 テンポがぴったりで、おかしくて、声を出して笑った。 敵でもない。味方ですらない。向かい合って立っているこいつは、紛れもない、おれ自身だ。 相手の方へ向かって走り出すと、そいつもこちらへ走ってくる。ぶつかる瞬間におれたちは、混ざりあって融けて、そして再び走りだす。 新しい風が吹きそうだ。 ぴったり重なってはいるが、確かに存在するふたつの足音を聞きながら、世界の境目を飛び越えた。 足音ふたつ、影はひとつ /090913 (title:華風) バッツだけはアナザーにも人格がありそう |