「ひ、」
引きつるように微かに、怯えを含んだ声が耳元で聞こえた。意地を張るなと、行為のたびに言っているのに。理性を残しておく事が、正義感の塊であるこの戦士の、残された砦であるのかもしれない。
「何故いつも、そうなのだ」
「っ、なにが、だ」
喘ぐというよりは、息継ぎを挟んだただの苦しげな声にしか聞こえない。もう少しくらい、色づいた声を。
「聞かせろと言っているのだ」
「!…や、っあ!」
一回強く突き上げてやれば、向かい合わせた体は縋るようにしがみついてくる。肩に歯をたてられたのを感じて、勝手な奴め、と声には出さずに毒づいた。
いいだろう。
「ならば、沈めてやろう」
意地も理性も崩すほどの快楽を与えてやろう。
闇に溺れて、自分に縋るがいい。
この行為が一方的で虚しいものではないと、無意味ではないと、分からせてみせろ。




光を沈める /090904
(title:落日)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -