「ガーランド」
がちゃり、と重々しい金属音をたてながら、ウォーリアが一歩前へ出る。足下に横たわっているのは、時を超えた宿敵であった。かつて騎士と呼ばれたその男の、身に着けていた兜の下の眼光は、もう以前までの鋭さを灯していなかった。ほんの数秒前までは挑発の言葉を並べていた口からも、弱々しい息しか聞こえてこない。
「ガーランド」
再び名を呼ぶ。返事の代わりとでも言うように、ガーランドの体から光が溢れ出てきた。極彩色を纏い霧散していくそれは、この世界から消えることを意味していた。辺りの景色が歪んでいく。ウォーリアの身がこの光に包まれるのも時間の問題だろう。膝をつき、顔へ耳を近付け、まだ彼に息がある事を確認する。
「輪廻は終わったのだ。ガーランド」
ぴくりと体が反応した気がした。しかし、ガーランドの向こうに地面が透けはじめる。別れの時なのだと悟ったウォーリアは、
静かに眼を閉じ、
額に口付けを落とした。

「我らの世界で、また逢おう」
そしてウォーリアの体から、ガーランドと同じような光が溢れた。輪廻は断ち切ったのだ。呪われたそれに囚われることはもう無く、楽園のように平和な国で生きてゆけるのだろう。先に消えたあの男も、きっとその場所で待ってくれている。消えることに恐怖はない。再び眼を閉じ、崩れゆく世界に意識を委ねた。




目覚めたらただの楽園であるように /090831
(title:zappy)

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