※立綱立(つきあってます)



「よう立向居、ジャージ来たぜー。サイズいくつだ?」
イナズマジャパンのユニフォームに加えて、新たなジャージ一式の支給があったらしい。大きな紙袋を持って部屋へ訪れた綱海さんに、サイズを告げる。Sです、と言うと、紙袋に片腕を突っ込んで、そのサイズのものを探してくれる。
「お、あったあった。ほらよ」
かっちりと畳まれてビニールに入れられた、上下のジャージとTシャツを眺める。新品らしい清潔さを感じさせるそれは、中学校に入学する前、制服が初めて自分の手元にやってきたときの高揚とする感覚と似ている。だが、隅に貼られたシールには、「S」と大きく書かれた文字。綱海さんはすでに、これと同じデザインの新しいジャージを身につけていた。
「綱海さんは、いくつなんですか。サイズ」
「ん、サイズ? 俺はLだけど」
「L……」
「何かあるのか、そんなこと聞いて」
いえ、と少し俯くと、綱海さんがじっとこちらを見ているのを感じる。恐らく待ってくれているのだ。この気持ちを言ったところで、綱海さんが何と言うかなんて予想がつくけれど、恐る恐る、口に出してみる。
「……背、大きくならないな、って。俺」
顔を上げて綱海さんと目を合わせる。当然、自分が見上げる形になる。コンプレックスというほど気にしてはいないけれど、こうまざまざと差を見せられると、やはり切なくなる。
「やっぱりキーパーとしても少し不利だし、……綱海さんとも、こ、恋人なのに、俺かなり小さいなって」
「なんだそんなことか? 海の広さに比べりゃちっぽけなことじゃねえか」
予想通りの反応に苦笑するしかない。だが綱海さんは「けどよ」と言葉を続けた。
「お前に背中預けててもちゃんと安心できるぜ。そりゃ身長あれば有利なのかもしれねえけどよ、お前はお前の仕事をしっかりこなせてんだ。自信もてよ」
「っ、綱海さん」
優しく紡がれる言葉に涙が出そうになる。些細なことを気にしている自分が馬鹿みたいだ。綱海さんが俺の頭をくしゃくしゃと撫でながら、「それによ」と少し屈んで目線を同じ高さに合わせてくれる。
「俺が好きなのは今のお前だぜ? 俺は何も気にしたことねえよ」
自分の頬が緩むのが分かる。それはもう締まりのない笑顔だったのだろう、綱海さんがぷっと吹き出した。「まあでもあと何年かしたらお前も絶対伸びるだろ!楽しみにしてるぜ」
髪がぐしゃぐしゃになるほど頭を撫でて、ジャージ配布の続きに綱海さんは部屋を出て行った。綱海さんが触れていたあたりに自分の手を置きながら、せめてもうひとつぶん、頑張って綱海さんに近づこう、とこっそり心に決めたのだった。

24.SとM
:110329


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