(イナイレ/財前と木野) 「なんだかなー。滅多にしないことしたせいかなあ、」 「ふふ、まさかー」 シャッターの閉まった店の屋根の下、夕立に襲われたあたしたちはびしょ濡れのジャージと制服をそれぞれ絞っていた。秋の買い出しの内容が大変そうだったから、手伝いに出たらこれだ。秋はそんなことないよって言ってくれるけど、あたしが珍しいことしたからこんな目に遭ったとしか思えない。 「わたし一人だったら、買ったもの守りきれなかったよ」 「え、ホント?じゃあ来てよかったんだよな、あたし、よかったー」 さっきまで、ジャージで覆って濡れるのを防いでいた荷物を見やる。あたしの腹とジャージの間に挟まれていたそれは、かろうじて中まで濡れずにすんだ。秋にそう言ってもらえると、あたし役に立てたんだなあって感じがして嬉しくなる。 でも、あたしたちはけっこう盛大に濡れてしまった。改めて秋のほうを見ると、秋は、いつも着ているブラウス一枚だけ。濡れて肌に張り付いたブラウスは、日に焼けていない肌色と、秋らしいシンプルな下着を、透かしてしまっていた。思わず自分のTシャツを確認する。長袖のジャージを着ていたあたしは、確かにTシャツも濡れていたけれど、秋ほどではなかった。あたしは慌ててジャージを脱いだ。全力で雨水を絞るあたしを見て秋も驚いたようで、「ど、どうしたの塔子さん」なんて言われた。 「ん!」 そしてそのジャージを、秋にかけてあげた。少し湿っているけれど、濡れきったブラウス一枚でいるよりはましなはずだ。 「え、いいよ、大丈夫だよ」 「秋めっちゃビショビショじゃん!風邪ひいちゃうだろ、あたしは平気だからさ、せめてそれ羽織るくらいしたほうがいーって」 あたしがパッと笑ったら、秋もちいさく笑った。「ありがとう、塔子さん」 止まない雨音を聞きながら、ポケットからクシを取り出して髪をとかす秋を見ながら、あたしはあたしのTシャツの中を盗み見る。見えるふたつの膨らみは、秋とは大きさもつけているものも違った。当たり前だけど。透けて見えた秋の胸元が、なぜかあたしの頭にやきついて離れない。それがちょっと恥ずかしい、というか、なんとなく秋に悪い気がして、視線をグレーの空にうつして、適当に別のことを考えた。 09.雨宿り :110215 |