少年は、困っていた。 自分の脳には自信があった。どんな敵が来ても、頭を使って戦略を練れば勝てると思っていたし、行動を共にしていた少女のことも、守ることができると確信していた。 だが少年を困らせているのが、まさしくその少女だった。少女は少年にとって、守るべき存在であった。ならば何故、少女のどこに少年を困らせる原因があるのか。 その、少女とともに過ごすことが、ひどく楽しくてしょうがないのだ。自分は騎士であり戦士であった。それなのに、少女と他愛もない話をして笑い合う。青い空の下、広がる大地に寝そべりまどろむ。時に、少女に甘えたくなる。守るという使命感以上の様々な感情で、満たされているのだ。 そして、時折少女のことを考えると、胸が苦しくなるのだった。息が止まりそうになることもあった。 苦しさの原因が分からぬことに対する苦しみが、少年を蝕んでいた。誰かに問うたところで答えは貰えない気がして、そのあたりの感情は自分の胸中に封じ込めてしまった。それがかえって、その感情を少年の小さな体の中で暴れ回らせた。 しかしそれらも、少女に会えば一瞬で消える。そしてまた独り、少女に焦がれて、胸を苦しめる。堂々巡りなことが、自分の頭でも理解できないという事実が、少年をただただ悩ませた。病にも似た、しかしどこか幸せなようにも感じる、複雑な何かを少年は患ってしまったのだ。 少年は、困っていた。 * かーなーり初期に書いたやつ フォルダ漁ってたら出てきたんで晒してみる… 2010/03/24 |