(あんまり言うなよ、恥ずかしいだろ)

微かに頬を染めながら、優しくほほえむ風丸を思い出す。それは晴れやかな空の下、風になびく髪がきれいだ、と言った時だ。そうかな、手入れも何もしてないし、と彼は特に気にしていなかったようだが、「俺はきれいだと思う」と再び確かめるように告げれば、そんな反応を返したのだった。褒められることにあまり慣れていないのだろう、いちいち照れる様が可愛いのだ。俺はたしかそれに対して笑顔が零れて、「きれいだ、風丸」ともう一度、言った。「ありがとう、豪炎寺」。いっとう美しい笑顔で、風丸はその隻眼を細める。ぱらぱらと舞う、ひとつに束ねられた髪は、主の気分を察知し楽しげに踊っているように見えた。

それが、今。彼は、繊維の束に成り下がった水色を纏い、黒い笑顔を浮かべているのだ。いや、水色ではない。くすんで、嫌な感じになっている。だというのに、艶は変わらず存在するのだから皮肉なものだ。揺れるその長い髪から目が離せなかった、けれど、彼とは一度も目が合うことはなかった。風丸、と呼びたくても、声にできない。あの彼は、風丸は、消えてしまったのだろうか。美しい水色を揺らして振り返る、あの笑顔が脳裏によみがえる。消えていないでくれ、とは心の中で思うだけで、消えていないだろうという確信も持てないほどに、彼は雰囲気から変わってしまっていた。



ここまで打って放置してた豪→DE風
行き詰まってるあいだにアニメが進んでしまい公開するタイミングを逃したとかいうオチ
せっかく強化中なんで晒してみる

2010/02/02



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