※吹雪が病んでる






みんな僕を可哀相だ、って言うけれど、どうしてそう思うんだろう。ひとりになっちゃったね。つらくないの。そんな言葉を、大人たちは投げかけてくる。
だから、僕はひとりじゃないのに。アツヤが、いるのに。誰も僕たちのことを分かってくれようとはしない。だから僕も、アツヤがいればよかった。アツヤと一緒に閉じこもることにした。

「今日アツヤの話したらさ、泣かれちゃったんだけど。どうしてかなあ」
ある大人が真っ青な顔をして涙をぼろぼろ流し始めたことを、淡々と報告する。アツヤなんかひどいことしたの?と問えば、お前としかいないんだからできるわけないだろ、と呆れたように言われた。「そっか、そうだよね」アツヤは僕のたった一人の弟で、アツヤと僕は二人でひとつだから。みんなひどいなあ、と呟くと、アツヤが何か言いたそうにしていることに気付いた。切なげな表情に、ほんの微かだけれど僕を哀れむような色が滲んでいて、違和感と若干の苛立ちをおぼえる。焦れったくて、なに、と僕の方から尋ねた。
「……兄貴さ、オレのこと、……」
うん、と相槌を打ったのに、アツヤは続きを話さなかった。
「もう、アツヤまで変だよ」
少し悲しくなって、何故か虚しくもなって、僕はアツヤに背を向けた。変なのは、兄貴だよ。とても小さな声でアツヤがそう言った気がするけど、聞こえなかったフリをした。
何だか、みんなに嘘をつかれてる気分になった。僕は何もしてないのに、アツヤといられればそれでいいのに。
アツヤはそこにいるのに、そう言う僕がおかしいって、どういう事なんだろう。ねえ、アツヤ。


嘘はあの子を救うのか
(title:けしからん)

精神科にいる吹雪
これでも私はしあわせそうな吹雪のほうが好きである

2010/01/03



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