昔の俺を見ているみたいで、だって?少なからず抱いてしまった苛立ちという感情を、俺はどう処理すればいいか分からなかった。それってつまり同情じゃないのか。周囲に追いつこうと必死な俺に、けれど結果にばらつきのある俺に、あんたは同情しているんじゃないのか。そう言ってやりたいけれど、それは俺の狭い心が生み出す醜い感情にすぎない、ということはさすがに理解していた。感情は真理ではない。そんな疑心を突き付けたところで、この場が気まずくなるだけだ。 そして何より、あんたは、驚くくらいに優しいやつだ。そのことも、何となくだが理解していた。 「言っとくけど同情とかじゃないからな」 苦笑いしながら、ちゃっかり釘を刺された。果たして俺はそんなに分かりやすいのだろうか。 「緑川がサッカー好きなのは、すごく伝わってくるしさ。いつか、自分の納得できる答えが出せるよ」 「───……、じゃあ、あんたは、風丸は、」 答えを出せたのか。一瞬の躊躇いはあったけれど、その言葉は俺にのまれることなく滑り出てしまった。感じ悪いな、俺、と思うのだが、もう手遅れだ。何となく逸らせなかった視線が捉えるこいつの表情は、何故だかひどく穏やかだった。のだが。 「分からないんだ」 と、彼は爽やかに言ってのけた。何だか一気に肩の力が抜けた。拍子抜けしてしまったのだ。こいつって本当に、何なのだろうか。 「でも俺は、悩み方が分かった」 「!」 「そういうのって人それぞれだろ? だからさ、」 すっと俺の肩に手が置かれる。柔らかな重みがかけられる。片方だけの瞳が俺を真っ直ぐに見据えて、 「一緒に、頑張ろうぜ」 それが、優しく細められた。 「おまえならきっと大丈夫だよ。緑川」 * もっと百合っぽいつーかむしろ風緑くらいの書きたい 2010/05/05 |