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『ふぁっ、ひか、る、んぅ、あっ!』



ああ、またや…。



『ひかる、イっちゃ…っ!』



もう、嫌や。



『…ん、ふぅ!』



俺以外の男とヤらんでや



道具を片付けようと部室に手をかけたら、聞き慣れた甘い声と卑猥な水音。

その甘ったるい声の張本人は俺の彼女、なまえの声

相手は財前なんやろう。さっきから何度も、何度も、『ひかる、ひかる』と自分の名前やなくて他の男の名前を口にするなまえに無性に腹が立ち、そして、淋しくなった。



『あ、蔵!』



俺が寂しげに陰に身を眩ませて、立っていると呑気に俺を呼ぶ声がした。



「…なまえ、」

『どうしたの?なんか、元気なさそうだね…』

「なあ、なまえ」




俺はなまえを抱き締めた

寂しくて、虚しく、惨めな俺。

抱き締めた時、前からシャンプーの香りがしよったのに、今は男独特の厭らしい香りが鼻を擽る




「なまえは俺の彼女でな?」

『当たり前だよ』

「浮気とかしてへんよな?」

『うん。私には蔵だけ』




俺は校庭なのにも関わらず、なまえに噛み付く様な口付けを角度を変えて何度も、何度も、繰り返す。




「なあ、俺のこと好き?」

『うん。』





その一言で俺はまた、満たされる。






(全部、嘘やと分かっとる筈やのに。)


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