小説log | ナノ



始まりは唐突だった。

「クリスマスは、みんなでガヤガヤやろうやー!」

俺ら四天宝寺中の男子テニス部の唯一のマネージャーであるなまえの発言に、レギュラーたちが訝しむような視線を彼女へと向けた。彼女はよく突発的にこういった発言をする。毎回脈絡が無いので、きっと俺らは何時まで経っても慣れることはないと思う。
いつもの如く、謙也が先陣を切ってなまえにツッコミを入れる。

「いや、何やねんいきなり!」
「だって光以外に彼女居らんやろ?独り身ならええやん!」

なまえの言葉はいつでも直球だ。気にしているところをピンポイントでついてくる。

「俺らは独り身ちゃうで!な、小春?」

出た、ガチホモ。

「黙っとれや一氏ィ!うちは参加するで、なまえちゃん(はあと)」
「わー!流石小春ちゃん!」
「小春ぅぅ!…しゃあないな、俺も参加すんで!」
「よっしゃ、ラブルス参加や!」
「ちゅーか、俺はええんすよね?(先輩らと違って)デートあるんで」
「今むっちゃ心の声聞こえたんやけど!取り敢えずリア充爆発しろ!」
「謙也、僻んだらそこで試合終了やで」
「何やその似非名言!」

軽くボケに回ったのは、俺も同じ気持ちだと悟られたくなかったからだ。そんな俺の心中を知ってか知らずか、なまえはニヤニヤしながらこっちを見つめて話を進める。

「だからさー!そんな寂しいクリスマスをおくる諸君は、みんなでレッツパーリィしようよー!」

さて、ここで俺の切り札発動や。

「盛り上がっとるところ悪いんやけど、うちは毎年家族とパーティが恒例やねん。せやからパスさして貰うわ。堪忍な」
「お、せや白石!俺もやねん。俺の弟まだ小学生やし」
「…えー」

不服そうな顔でこちらを見るなまえ。だが仕方ない。ゆかりだって、もしかしたらまだサンタを信じているかもしれない!

「なまえー、おかんがクリスマスはバイキング連れてったるって言ってくれとんねん…。わいもパーティしたいんやけど…」
「あー、そっかぁ。残念やなあ」
「なまえはん、クリスマスは宗教的な問題が…」
「あ、師範……そらしゃあないよ」

本気で悲しそうな顔をしているなまえに罪悪感を残したまま、この話は終わった。


**クリスマス当日**

「人数少なくてちょい淋しいけど、いっぱい盛り上がろー!!」
「よっしゃ!うちらにまかしとき!」
「取り敢えず、俺が今日の為に用意したモノマネ披露したるで!」

結局集まったのは私とラブルス。けれどパーティも盛り上がってきたときに、まさかの来訪者がやってきた。

「うわ、誰!?……って!」
「白石!?」
「蔵りん、何でここに?やだ泣いてるやん!」
「泣いてへん…泣いてへんわ!」

白石は突然音もなく扉を開いた。目をハンカチで抑えながらというオプション付きで。

「白石、何かあったん?」
「……ゆかりが、…グスッ」
「妹がどないしたんや!」

ユウジが強めに聞くと、白石はゆっくり話し始める。

「……か、」
「か?」
「彼氏、連れてきおった…」

そ う き た か !
なるほど、あの可愛い妹ちゃんのことだ。お年頃だし、彼氏の一人くらい連れてて当然だろう。

「そんだけやったら、俺だって予想の範囲内や。でもな…!」
「おん、話して」
「…あいつの彼氏、うちのクラスの松田やった」

ううっ、それは辛い。松田はサッカー部キャプテンで、白石と同じくらいモテる。

「しかもな!!松田、俺に向かって『すまんな白石くん。言い出せんかってんけど、ゆかりとお付き合いさせてもろうてます』とか言うねんで!ゆかりって呼び捨てした松田を殴らんかった俺偉ない!?」
「うん、偉い偉い」

取り敢えずキレた白石の扱い方を知らないから、傷つけないように当たり障りない返答をする。その対応は正解だったようで、白石はやっと気を落ち着かせた。

「大丈夫やで白石!ここでフレンズで温かいクリスマスを過ごそう!」
「…なまえっ!!」

感極まって、普段なら絶対許さないハグをした。少し感動ムードになったところで、また新たな来訪者が。白石とは違い、全速力で此方に向かってきた。

「うわぁぁん!!!」
「…え、ちょ、謙也!?」
「ちゅーか止まれェェ!」

目を抑えながら走っているもんだから、前をちっとも見えちゃいない。ああ、その先には…!

「謙也、ケーキ!前にケーキ!!」
「あぁ!?ギャァァアー!!」

お約束通りでした。顔からケーキに突っ込んだ謙也は、顔面がクリーム塗れ。

「その体当たりギャグをやるとは…謙也、恐ろしい子っ!」
「あぁ、言わんこっちゃないわ」
「流石謙也くん!浪速のお笑い魂やね、ユウくん!」
「小春ぅぅ!俺らも負けてられんな!」

「お前ら…俺の話聞けやァァ!」


÷*÷☆÷*÷
メリーメリークルシミマス!
÷*÷☆÷*÷

「え、クリパ?何それ聞いてへんけど!」といっていじけてしまった副部長を宥めるのは、翌日の話。



2010.12.24


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