何の変哲もない日曜日の13時。テニス部顧問のオサムちゃんが突然午後から出張が入ったらしく、本日の練習は12時で切り上げられたようだ。
30分くらい前に届いた、光からの「もう昼食った?」という簡素なメール(わたしが遊びに出掛けてない前提なのもいただけないけれど、事実暇を持て余していたので良しとする)によって近くのファミレスへと駆り出されたわたしは、ドリンクバーのオレンジジュースで乾きを潤しながら、注文したカルボナーラを待っている。前に座る光はジンジャーエールを飲みながら、ハンバーグ+スープセットを待つ。
日曜の昼のファミレスはやはり混雑を極めていて、店員もめまぐるしく動き回っている。いつも通りの他愛ない話をぽつぽつしていると、不意に光が立ち上がった。トイレ、と最低限の単語のみ残して光は店の奥へ消えた。

光の姿が見えなくなるや否や、テーブルに放置されたままになっている光のiPhoneの画面が点灯した。今日は珍しくサイレントモードにしてたみたいだ。退屈しのぎに画面を覗き込むと、白石先輩からメールが来ていた。しかもメールの件名は『至急!』となっている。
…うわ、めっちゃ気になる!気になるけど、光は自分のケータイが他人に触られるのをめちゃくちゃ嫌う奴だ。例え彼女のわたしであっても。でも『至急!』だよ!?すっごく重要なら、わたしだって知る権利くらいある筈だ。ていうか本気で気になるからもういいや!見ちゃおう!

左から右へ指を運んでロックを解除すると、またしてもロックがかかっている。しかも今度は暗証番号!やっぱりガードが固い。
取り敢えず光に関連する4桁…。0720、じゃない。2714、でもない。ええ…誕生日でも学籍番号でもないの!もう分かんないよ!こうなったら適当だ、えっと、

「…え?」

マジで!?ロック解除できちゃったんですけど!!え、でも光に限って、そんな、まさか!

「人のケータイで何して…ちょ!」

そしてタイミングよくお手洗いから帰ってきた光にケータイを即座に没収された。

「なんでロック解除しとんねん!」
「い、いや!わたしかてまさか解除出来ると思てへんかってん!偶然!」
「……ああもう!!」
「ごめんて!せやけど、まさか光が…」
「なんも言うな!!もう変えたる!!」
「嫌や!嬉しいから変えんとって!もう絶対見ぃひんから!!」


彼氏のケータイの暗証番号が、わたしの誕生日だった件



2013.03.22


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