この前彼女が何気なく「部活してるサエ見てみたいなあ」なんて言ったから、今日は生徒会の仕事を昼中に片付けて、彼女の手を引いて部活に向かう。
今日は砂浜ダッシュの日だから、彼女には部室に置いてた麦わら帽子をかぶせた。日焼けは大敵だからね。

「あの独り言、聞こえてたんだ」
「俺、君の言葉は一言も聞き逃したくないんだ」
「ふふっ、サエらしいね。ほら、他の部員さんたち待ってるよ!」
「うん、行ってくる」

俺以外の奴は見ちゃダメだよ、って言おうとして口をつぐんだ。俺は独占欲が人一倍強い。彼女を今まで部活に来るように誘わなかったのだって、他の部員に見せたくないから。今だってそうだ、麦わら帽子がやたら似合う眩しい彼女が愛しくて仕方ないのに、俺だけに見えているのではないと考えると、爽やかでない感情が沸々と煮えたぎっている。
けれど、彼女から嫌われるのだけは死んでも御免だ。彼女に嫌な思いをさせるのであれば、俺の嫉妬なんてものはどうでもいい。

「サエ」

数歩ほど歩みを進めたところで、綺麗に透き通った声が俺の名前を呼んだ。

「ん、どうした?」

ベンチから立ち上がっている彼女は逆光になっていて表情が拝めない。幾ら視力が良い俺も、日光には敵わないよ。

「サエだけ見てるから、安心してね!」

そのあまりの眩しさに目眩がした。君は天使なんかじゃなくて、正しく太陽なんだ。例えその言葉が本心でなかったとしても、残念ながらもう俺の心は焦がされているんだ。
みんなから揶揄されながら走る砂浜はちょっと痛くて、ペースを無視して走るなんて、俺らしくもないことをしてみた。夕陽が海面を反射していたけれど眩しく感じなかったのは、きっと君の所為だよ。


とあるリア充の部活中



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